• 森の中の動物園で
    いつもの日常をちょっとだけ離れて
    大切な人と一緒に
    笑顔になってもらえたら嬉しい。

      • 茶臼山動物園
        ウォンバット個体群管理者

        髙田 孝慈

        Kouji Takada

      • 長野市茶臼山動物園
      • 長野市篠ノ井有旅570-1
      • 026-293-5167
      • http://www.chausuyama.com/

どうしても動物園の飼育員になりたくて
ゆかりのない長野を第二の故郷に。

 長野市の南西部に位置する茶臼山エリアの緑豊かな森の中にある「茶臼山動物園」は、約15 haの広い敷地に81種もの動物たちが、ゆったりのんびりと暮らしています。
 動物の飼育員になりたくて専門学校に通い、縁あって茶臼山動物園にきたのが今から25年前のこと。千葉県出身なので長野のことはまったく知りませんでしたが、夢だった飼育員になれて本当に嬉しかったですね。ただ、その当時はまだ茶臼山動物園の認知度は低く、どちらかというと「恐竜公園」のほうが人気でした。それでもスタッフ全員が、自分たちにできることは何かを考え地道に取り組み続けたことで、近年では県外からのお客さまも増えてきました。
 今は茶臼山動物園というと、レッサーパンダを思い浮かべる方も多いのではないかと思います。レッサーパンダは昭和60年に、長野市の友好都市である中国の石家庄市から雄と雌の2頭が来園し、現在では日本有数の16頭ものレッサーパンダを飼育しています。飼育エリアはできるだけ自然な姿を見てもらえるように工夫を凝らし、非常に近い位置からレッサーパンダを観察することができます。
 また最近では、アライグマのカール君も人気ですね。SNSから一躍有名になったカール君ですが、昼間は本当にマンホールに入ったままなので、なかなか姿を見ることができません。飼育員が1日1回蓋をあけて様子を確認しますが、非常に迷惑そうですぐに戻って蓋を閉めてしまいます。そんな絶妙なタイミングで訪れた方は、非常にラッキーですね。

日本国内でも希少な
ウォンバットを飼育しています。

 今、私が飼育を担当しているのは「ウォンバット」です。ウォンバットはオーストラリアの草食動物で、生態は異なりますがコアラに近い動物です。夜行性で、昼間は地中に穴を掘ってもぐっていることが多いので、姿を見るなら午前中早いうちか閉園前がおすすめです。
 茶臼山動物園にウォンバットがきたのは、1995年。長野冬季オリンピック開催に伴う親善大使として、オーストラリアのタロンガ動物園から3頭が来園しました。「チャタロウ」「スミレ」「モモコ」と名付けられて仲良く元気に過ごしていましたが、2004年にチャタロウが、そして今年の春にスミレが死亡してしまい、モモコ1頭になってしまったんです。そこで同じくウォンバットを1頭飼育していた名古屋の「東山動植物園」から雄のウォレスを招いて、モモコと一緒に飼育することになりました。スミレが死亡して寂しそうだったので、2頭が仲良くなってくれると嬉しいですね。
 ウォンバットは飼育や繁殖が難しく、現在日本でウォンバットを見ることができるのは2つの動物園だけ。また頭数も7頭しかいません。そのひとつが大阪の「五月山動物園」で、タスマニア島由来のウォンバットが5頭飼育されています。そして残りの2頭がここ、茶臼山動物園なんです。茶臼山動物園にいる2頭はオーストラリア本土に生息するコモンウォンバットで、ここでしか見ることができません。新しく仲間になったウォレスとモモコが、レッサーパンダのロン君やアライグマのカール君に続く茶臼山動物園の人気者になってくれたらいいなと思っています。
 8月10日(金)~16日(木)の期間は、夜9時まで開園する「サマーナイトZOO 2018」が開催されます。夜行性のウォンバットをじっくり見られるチャンスなので、ぜひ大勢の方に参加していただきたいですね。夜だからこそわかる動物達の生態を楽しんでいただけたらと思っています。

(2018年8月号掲載)