• 飯綱のりんごの美味しさに
    魅せられて
    長野の地に移住し
    りんご農家になりました。

移住の決め手は
りんごの美味しさでした。

 東京生まれの東京育ちで、いわゆる会社員だったんですが、今から10年ほど前に「農業をやろう」と思い立って仕事を辞めました。それからしばらくは各地を巡ったり、農家に見学に行ったりしていたんですが、飯綱町を訪れたときに食べさせてもらったりんごがとにかく美味しくて。農業をやるならここしかないと、すぐに飯綱町に移住することにしたんです。その後、「アップルファームさみず」というところで2年間研修し、2011年に独立しました。
 高齢でりんごの栽培を続けられなくなった方の畑を引き継いで始めた「りんご農家」としての第一歩は、これまで学んだことを自分の力として発揮する1年でした。慣れないこともありましたが、成木を譲り受けたので、最初の年から収穫があって助かりましたね。そこから少しずつ手を広げ、今は2町3反歩ほどの畑を手掛けています。
 結婚したのは5年ほど前。自分の作ったりんごを、共通の友人を介して彼女が食べたのが出会いのきっかけでした。関西出身で農業の経験もなかった彼女にとって、飯綱町という全く知らない土地でのスタートは大変だったと思います。それでも地域の人たちに助けてもらいながら、子どもにも恵まれ、毎日賑やかに暮らしています。何かと声をかけてもらったり、子どもの面倒をみてもらったりと、人からいただく温かな思いやりに感謝する日々です。

安心・安全で
美味しいりんごを作りたい。

 今、うちの畑で作っているりんごは15種類ほど。りんごの王様「ふじ」はもちろん、信濃生まれの「シナノスイート」や「シナノドルチェ」、近年また人気が高まってきた「紅玉」などを中心に栽培しています。さらに今年初めて市場に出された長野県オリジナル品種りんご「シナノリップ」も植えました。数年後には収穫できると思うので、今から楽しみです。
 また、りんごはできるだけ農薬を使わない「減農薬」で栽培しています。消費者の方の安心・安全はもちろんですが、自分の体に負担をかけないことも非常に重要だと思っています。畑は、私たち農家にとって仕事場であり、生活の場でもあります。うちは有機質肥料を使って土の養分を養い、ミミズや微生物が繁殖できるように除草剤も使っていません。だから一面草でふかふかですし、虫もいっぱいいます。小さい子どもが走り回れる畑、自分の子どもが安心して遊べる畑こそ、安心の証だと思っています。これからも、誰にとっても安心・安全な美味しいりんごを作り続けていきたいと思います。
 よくお客様に、どんなりんごが美味しいのかと聞かれることがあるんですが、りんごの美味しさで重要なのは、酸味と甘みのバランスだと思います。フルーツというと甘みばかりが着目されがちですが、りんごは酸味があってこそ美味しい。マルシェなどで直接お話する機会もあるんですが、酸味を求める方も多いですね。お客様の好みにあったものをお勧めして、食べていただいた方が「美味しかったよ」とリピーターになってくださると、本当に嬉しいですね。
 飯綱町は標高が500~700mほどあり、寒暖の差が激しく、平均気温は10・9℃と涼しい気候が特徴です。降水量も少ないのでりんごの栽培に適していて、町全体では36種類以上ものりんごが栽培されているんです。りんご農家だけでなく、飲食店やお菓子屋さんなど、町全体で「りんごといえば飯綱町」を盛り上げようとしているのを見ると、りんご農家としても、「飯綱のりんごは美味しい」と言ってもらえるよう、頑張って美味しいりんごを作っていきたいと思います。

(2018年12月号掲載)