• 一つひとつ手作りされる
    美しい和菓子に込められた
    日本の四季を愛する文化を
    若い世代に伝えていきたい。

      • 旬彩菓たむら
        ながの東急店 店長

        田村 さくら

        Sakura Tamura

      • 旬彩菓たむら ながの東急店
      • 長野市南千歳1-1-1 ながの東急百貨店 地下1F
      • 026-226-8181(ながの東急代表)
      • http://www.shunsaikatamura.com/

お菓子屋さんになりたい
という小さい頃の夢を叶えて。

 生まれも育ちも小川村。豊かな自然の中で4人兄弟の長女として育った私は、小さい頃から母親を手伝って家の手伝いをするのは当たり前でした。中でもお菓子を作るのは大好きで、「大きくなったらお菓子屋さんになりたい」と、その頃からずっと思い続けてきました。
 その後、長野市内の商業高校に進学して学んでいく中で、インターンシップとして兵庫県にある大きなパティスリーに、2週間ほど研修に行く機会があったんです。すでに菓子職人として修業を始めている先輩方と一緒になって仕事を体験し、いろいろとお話ができたことはとても楽しく、また参考になりました。当時、製菓の専門学校への進学も視野に入れていたんですが、ある方の「いろいろな考え方があるけど、技術は店によって違いもあるし、やっぱり現場で覚えていく方が真剣さが違うから、確実に身に付くと思う」という言葉を聞いて、なんだかとても腑に落ちたんですね。それで、高校を卒業したら現場で技術を身に付けていこうと決めました。
 「旬彩菓たむら」に就職したのは、本当に手作りで一つひとつ丁寧にお菓子を作っていたから。入社後半年ほどで、上生菓子を学ぶチームに配属された時は嬉しかったですね。でも先生がいわゆる昔気質の職人さんで本当に厳しくて。自分でも出来ないことが悔しくて、仕事で初めて泣きました。

ながの東急店の店長として
出来立ての味をお届けしています。

 その後3年ほど修業した頃に、社長から「ながの東急店の店長をやってみないか」と打診を受けました。最初は「自分は職人になりたいし、店長なんて無理です」と断っていたんですが、「厨房がある店舗だから、菓子も作れるから大丈夫」と口説き落とされました。
 店長になると、ただお菓子を作っていればいいというわけにはいかず、最初は戸惑うことも多かったですね。でも、「厨房があるということは、出来立てを提供することができる」ということに気づいた時、一気に視野が広がりました。そこから「店舗で作ってその場で提供する」ながの東急店だけの限定商品が生まれたんです。
 金曜日の朝限定の「朝どら」は、生地作りから厨房で行い、一枚一枚丁寧に手作業で焼いています。焼きたてのどらやきの皮は外側がカリッ、サクッ、内側がもちっとしていて、いわゆるどらやきの皮とは食感が違います。餡は丹波の大納言を用い、専任の職人が丹念に炊いたものをたっぷりと挟み込みます。出来立ては袋に入れずに試食に出ますので、ほんのり温かい「朝どら」を、ぜひ一度味わってほしいですね。
 また、小さくて可愛らしい「門前おはぎ」も、ながの東急店限定です。毎朝厨房で、野沢温泉村のもち米「もちひかり」を蒸かして程よくつぶし、餡で包んでいきます。種類はつぶあんをはじめとする定番4種と期間限定1種の計5種類。できるだけ素材を活かし、一度にたくさん作らずに、店の売れ行きを見ながら厨房で少しずつ追加して作っています。これも、出来立ての味を楽しんでほしいから。時間が経つと硬くなる、昔ながらのたむらの味を堪能してほしいと思います。
 「その場で作って提供する」ことは、職人として菓子を作ってきた自分だからこそできることであり、店舗運営やお客様の声を直接お聞きするという経験も、職人としての成長に繋がっていると感じています。これからも今の自分にできることをどんどん吸収して、職人として成長していきたいと思います。

(2019年1月号掲載)