• 長野県は宇宙県。
    この恵まれた環境で
    美しい星空を、
    多くの方に楽しんでほしい。

星に導かれて
長野にやってきました。

 山形、東京、北海道の大学で天文を学び続け、8年前に長野にやってきました。長野県には国立天文台野辺山宇宙電波観測所やJAXA臼田宇宙空間観測所をはじめとする多くの天文研究施設があります。またプラネタリウムも県内に10施設あり、人口比でいうと「プラネタリウムが最も多い県」でもあるんです。その内のひとつ、長野市にある長野市立博物館で、現在はプラネタリウムのプログラムや博物館の企画展などに関わっています。
 長野市立博物館では、天文学習としてのプログラムはもちろん、できるだけ多くの方に星空の美しさを楽しんでいただけるようオリジナルプログラムを投影しています。例えば「リラックスプラネタリウム」では、星空の解説はせずに、音楽を聴きながらその日の夕方から朝にかけての星空を眺める癒しの時間を過ごしていただけます。これは市立博物館オリジナルの企画で、各月ごとに曲も変えています。7月は「星野源」の曲を流し、SNSで知った若い女性が大勢来館されて驚きました。ちなみに10月は「米津玄師」、11月が「倉木麻衣」、12月は「クリスマスソング特集」を予定しています。ぜひ多くの方に体験しに来ていただきたいですね。
 小さい子ども向けには、歌ったりクイズをしたり、声を出しても騒いでもOKの楽しいプログラム、「キッズスペシャル」を開催しています。ちょっと照れるんですが、子ども番組のお兄さんになったつもりで頑張っています。子どもたちの明るい笑顔や楽しそうな様子を見ると嬉しくなりますね。

裾野を広げ、多くの人が星を
楽しむことで地域活性に繋げたい。

 今は情報過多の時代。インターネットでさまざまなものを見たり知ったりすることができますが、博物館の使命として、リアルを共有していくべきだと考えています。実際に博物館の望遠鏡で覗いて見る「今」の星は、まさしく今この瞬間、宇宙から届いている光を見ているということです。「何百光年離れた星が放つ何百年前の光を今、見ているんだ」ということを実感してもらえたら嬉しいですね。
 市立博物館では毎月第4土曜日に、プラネタリウムの投影と40 cm反射望遠鏡での星空観察を行っています。これからどんどん寒くなっていくので、防寒をしっかりして、ぜひリアルな星空を楽しんでいただけたらと思います。
 この観察会以外にも、ご協力いただいているボランティアの皆さんや同好会のメンバーが中心となって、さまざまな場所で観察会を行っています。長野駅で通りがかりの人に月を見てもらう、という企画を開催したこともありました。ふだん興味がない人ほど、本物を見た時の感動の振り幅が大きいんですよね。最近は阿智村の事例もあり、星空観察のツアーを開催する市町村も出てきました。私自身、新しいプラネタリウムプログラムの企画や観察会などを通して、少しでも星を楽しむ人の裾野を広げ、星を通して長野県全体が活性化できるよう取り組んでいきたいと思います。
 秋は、夏よりも夜が長く気候的にも良い季節なので、ぜひ星や月を見てほしいですね。中秋の名月と言われるように月も綺麗ですし、アンドロメダ銀河も見ることができます。長野県はもともと標高が高く、さらに街中からでも車で少し走れば星が綺麗に見える場所まで行くことができるので、星を見るには最適な環境です。秋の夜長にのんびり星を眺めてみてはいかがでしょう。

(2019年11月号掲載)