信州の川中島白桃が
美味しいお菓子に
なりました。

信州のたからもも/1個 130円(税別)

「たむら」でしか作れない和菓子を追い求めて

 旬彩菓たむらは、長野の和菓子屋として地域の皆様にご愛顧いただき、今年、創業90周年を迎えることができました。先代の背中を見ながら育って、菓子職人となり30余年。日々、試行錯誤を繰り返しながら、少しでも美味しいお菓子を皆様に味わっていただきたいと、その一心で歩んできたように思います。
和菓子は、先人たちが創意工夫を凝らし、日本の美しい四季の彩りや、年間を通して行われる行事などとともに発展してきた日本の文化でもあります。その技と知恵の恩恵を受ける現代の菓子職人の一人として、自分も常に、今の時代に合った新しい菓子を作りたいと思っています。そしてなによりも、「たむら」だから作れる、「たむら」でなければ作れないお菓子をひとつでも多く、形にしていきたいと思っています。

長野に根付く和菓子店として地の物を大切にしたい

 たむらでは、地域の食材を活かした菓子作りを目指し、長野県産の小麦や飯山みゆき卵、戸隠のそば粉や小布施のオブセ牛乳など、できるだけ県内産の素材を使ったお菓子作りをしています。また、ぶどうや桃、りんごなどの果物も、地の物を探して生産者さんたちとのつながりも広がっています。
 そんな中で出会ったのが川中島白桃の農家さん。川中島白桃は全国的にも非常に有名ですが、桃は商品として流通する量が少なく、ロスが多い果物でもあります。ジュースやジャム、ピューレなどに加工されたものをなんとかお菓子に活かせないかという話になったのですが、桃のお菓子というのはとにかく難しいんです。どうしようかと悩んでいた頃に、たまたまお会いした洋酒メーカーの社長さんに、「川中島白桃の菓子を考えていて」と、ぽろっと言ってしまって。そうしたら社長さんが「協力します」と、桃のリキュールなどのさまざまなサンプルを届けてくださったんです。これはもう作るしかないと覚悟を決めて、桃の菓子の構想を真剣に考え始めました。

試行錯誤の連続から新しいお菓子が生まれる

 そこからが生みの苦しみの始まりです。何度も失敗を繰り返し、投げ出しそうになったこともありました。試作でうまくいったと思っても、商品化に合わせた量で作ると全くうまくいかずに全部ロスになってしまったり、モニターさんに試食とアンケートをお願いしたら、厳しいご意見ばかりだったり、本当に何度も心が折れそうになりました。それでも頑張れたのは、これはたむらじゃなければ作れないお菓子だと思ったから。そうして粘り続け、構想から約3年の歳月をかけて、「信州のたからもも」ができました。

ふんわりと優しい桃の香と果肉入りの白餡

「信州のたからもも」には信州の自然の恵みがたっぷりと詰まっています。長野県産小麦と飯山みゆき卵、松代にある養蜂場の蜂蜜、そして川中島白桃のピューレとフリーズドライの果肉。生産者さんたちの想いを私たちが菓子という形にして皆様にお届けできることを本当に嬉しく思っています。
 餡は国産白手亡の白餡がベース。ここに川中島白桃のピューレとフリーズドライの果肉をたっぷりと入れ、たむら特製の桃餡に仕上げます。餡を包む生地にも桃餡を混ぜ込むことで、生地と餡との一体感を生み出しています。口に入れた瞬間に広がるのは川中島白桃の香りと風味。人工的ではない、本物の桃の美味しさを感じることができます。しっとり、ほろりとした生地となめらかな餡も相性抜群で、日本茶はもちろん、これからの季節はアイスティーやアイスコーヒーともよく合います。
 世界に一つしかない「信州のたからもも」。たむらにとっても特別な宝物になりました。

今だからこそわかる和菓子の力

 新型コロナウイルスで、私たちの暮らしも大きく変わっていますが、今、改めて感じるのは和菓子の底力です。出かけることもままならない暮らしの中で、柏餅や麩まんじゅう、水ようかんに季節を感じ、何の行事もできないけれど、せめてお菓子だけでもいただいて今の季節を楽しもうと、お店を訪れてくださるお客様が大勢いらっしゃいます。本当にありがたいことであり、また、少しはお役に立てているのかと嬉しくなります。そして思うのは、「ここで作って、ここで売る」ことの大切さ。その原点をもう一度しっかりと心に刻み、これからもこの地で地域の皆様とつながりながら、歴史を紡いでいきたいと思います。

(6月12日インタビュー)
  • 本店
  • 住所/長野市伊勢宮1-18-14
  • TEL/026-228-9235
  • 営業時間/9:00~18:00
  • 定休日/月曜日
  • 駐車場/8台

  • ながの東急店
  • 住所/長野市南千歳1-1-1ながの東急百貨店 地下1F
  • TEL/026-226-8181(ながの東急代表)
  • 営業時間/10:00~19:00
  • 定休日/ながの東急百貨店に準ずる
  • 駐車場/ながの東急百貨店駐車場をご利用ください。
  • http://www.shunsaikatamura.com/

(2020年7月号掲載)