• 私たちの歩みが
    いつか誰かの小さな芽となり
    その芽がやがて
    木となり、森となりますように。

全く違う2人が出会って
周囲を巻き込む力が生まれた。

 2018年に開校した、長野県立大学。その1期生、2期生として学び始めた私たちが出会ったのは、県立長野図書館の「信州・学び創造ラボ」のワークショップでした。少人数の大学なのでそれまでもお互いの存在は知っていましたが、地域活動へのアプローチや興味のある分野が全く違っていたので、自分のやりたいことや悩んでいることなどをじっくりと語り合ったのはその時が初めてでしたね。
 そんな2人が一緒に活動するきっかけとなったのは、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言でした。行動が制限され、やりたいことができない。そんな日々の中で、自分と同じように地域活動に取り組んでいた友人たちが、さまざまな要因によって活動を止めていったんです。学ぶため、暮らすためにはアルバイトを増やさないとやっていけないと、輪から離れていく。地域との共創に興味を持ち、何かしたいと思う学生は増えているのに、続けることができなくなってきている。それは本当にショックで、もっと持続的に学生が自分の思う未来を自由に語り合い、その未来に向かって一歩を踏み出せるようなコミュニティを作りたいと思うようになりました。
 その第一歩として、まずは目に見える形で「場」を作ったらどうだろうと、シェアハウスを思いついたんです。

背中を押してもらった私たちが
次は誰かの背を押して。

 2人で「シェアハウスをつくりたい」と声をあげてからオープンまで約半年。この短い期間で起ち上げまでたどり着けたのは、多くの方のサポートやアドバイスがあったからです。私たちが「やりたい」と言っても、2人だけの力でできることは本当に少なくて。でも、大学の友人や教授、CSIの先生、アドバイザーの方々、インターンでお世話になっている会社の方、そして地域の皆さん。本当に多くの方が私たちの声を拾い上げ、時に叱り、時に励ましてくださいました。私たちには経済的資本はありませんが、人と人とのつながりという社会関係資本は、あふれるほどに得ることができたのではないかと思っています。「合同会社キキ」を起ち上げたのも、私たちが背中を押してもらった幾多のご縁、信頼を大切にし、さらにその輪を広げ、次の活動につなげたいと思ったからです。「起業はゴールではなく手段である」と大学で教えられた通り、これからも自分たちがやりたいと思うことに挑戦し、その行動に責任を持っていきたいと思います。
 今後は、シェアハウスの運営を軌道に乗せながら、新たなスタイルでコミュニティを作り、そこから何が見えてくるのかを探っていきたいと考えています。直近では、公益財団法人長野県みらい基金による「リビングラボ」のプロジェクトに参画し、長野地域で3年間かけ「働くこと」をキーワードに、新たなコミュニティ作りに取り組んでいきます。
 終身雇用制度が崩れ始めた今、私たち若者は、どのように働き、どう生きるべきか迷うことも多々あります。そんな思いを出し合うことで、私たちなりの未来の在り方を、一緒に創り出していければと思っています。第1回目の「ハタラクラボ」は、8月に開催する予定です。開催日時や場所についてはホームページやフェイスブックでお知らせしますので、興味のある方はぜひ参加していただきたいと思います。
 今はまだ、私たちだけの小さな2本の「キ」ですが、この活動を通して誰かの中に眠っていた種が芽吹き、やがて木へ、そして長野にすてきな森ができたらいいな、と思っています。

(2021年8月号掲載)