• いろいろな人や
    異業種が集まることで
    起きる「揺らぎ」が
    やがて地域に伝わっていく。




      • 株式会社R-DEPOT

        代表取締役 倉石 智典

        Tomonori Kuraishi

      • info@r-depot.com

建物と人の巡り合わせは
その土地を知ることから始まる。

 長野市の東町に拠点を構え、「空き家の未来をデザインする」をコンセプトに、リノベーションを手掛けるようになってから、早いもので10年以上経ちます。長野市内の「空き家」をキーワードに、貸したい人と借りたい人をつなぎ、不動産の枠を超えて設計、施工、さらには経営や商売の相談まで、あらゆることを手掛けてきました。
 この仕事は、空き家を見つけて大家さんと話をしながら、その土地の歴史や有り様を知っていく過程が一番面白いんです。妄想を膨らませながら、この家に合う人はどんな人かな、どんな商売をすると地域に溶け込んでいけるかな、と想像していく。そうして良い巡り合わせが生まれた時は本当に嬉しいですし、やりがいを感じますね。地域に根づく人たちが増えることで、長野のまちも少しずつ変わってきているように思います。
 ただ、あらゆることを一人でやっているので、やりたいことはいっぱいあるのに体はひとつしかないというジレンマもあって。そんなときに、このビルに出合ったんです。

長野県の電話交換業務開始の
地に建つビル。

 善光寺へと続く中央通り、犀北館へと向かう横道の右側に、NTTのビルがあります。ここは、長野県の電話交換業務開始の地であり、敷地内には記念碑も建っています。きっと当時は花形といわれた交換手の女性たちで賑わう、長野の中心地だったんでしょうね。善光寺を核とした門前町の華やかな様子が目に浮かびます。地域の方に聞くと、その後は電報局としても活用されていたとか。時代の変化や技術の進歩によって大きな設備が必要となり、やがて活用されなくなっていったそうです。
 許可をもらって見学させていただき、ビルの奥にある倉庫や駐車スペース、建物の堅牢な作りや土地が持つストーリーを知るごとに、このビルをリノベーションした後のイメージが自分の中でどんどん広がっていきました。これだけのスペースがあれば、いろいろな企業が集まって、それぞれがゆるやかにつながり合える場になるのではないか。移住や起業をめざす人が、その夢を実現させるためのあらゆるサポートを受けられる拠点にできるのではないか。そんな妄想が膨らんでいったんです。
 そこから一気にプレゼンシートを書き上げ、何度もブラッシュアップを重ねながらNTTさんにご提案させていただきました。そして多くの方にご尽力をいただくことができ、R︲DEPOTが実現したのです。

R-DEPOTを拠点に
人と地域がつながっていく。

 現在R︲DEPOTは、地域の方や学生さんにも運営に関わっていただき、オープンに向けて準備を進めています。
 1階は直営のカフェを中心に、古材ショップ、町の案内所を開設する予定です。地域の人や移住希望の人、新しいお店をオープンさせたい人など、あらゆる人のコミュニケーションの入口にしたいと考えています。
 2階にはクリエーターや、不動産、設計、施工を手掛ける企業など、長野のまちに住みたい人、長野で何かを始めたいと思っている人のサポートが、ここですべて完結できるような拠点を作りたいと考えています。またイベントフロアも設置して、さまざまな人との交流の場も提供していきたいと思います。
 3階は、企業のサテライトオフィスやIT系企業などが入居予定です。異業種間のコミュニケーションによって生まれる「何か」が、長野に新たな動きをもたらしてくれるのではないかと期待しています。またコワーキングスペースも完備し、一般の方はもちろん、起業を考える人や移住準備等に対応できるスペースとしても活用できるようにしていくつもりです。
 カフェのオープンは6月1日。今はそこに向けて全力で取り組んでいる最中です。自分自身もドキドキワクワクの毎日。オープン後は多くの方に利用していただきたいですね。

(2022年4月号掲載)