• 善光寺仲見世通りの賑わいを
    これからもずっと
    見つめ続けていきたい。

善光寺のお膝元で
江戸時代から商いを営んで。

 江戸時代に善光寺のお膝元で小間物屋をひらいた初代から、明治、大正、昭和、平成、そして令和へと時代を重ね、「つち茂」は私で18代目となりました。老若男女すべての人を受け入れ、「一生に一度は善光寺参り」といわれる善光寺の歴史は、およそ1400年。本堂へと続く仲見世通りは、7、777枚もの石畳の両脇に商店が立ち並び、善光寺を訪れる皆さまとともに発展してきました。
 明治時代に建てられた建物を先代より引き継いで商いを続けてきましたが、課題となったのが老朽化です。長期的な視点で考えたときに、「つち茂」が仲見世で今後どう在るべきか、どう在りたいかを考えるようになりました。
 そんなときにご縁をいただいたのがスターバックスさんです。はじめは悩みましたが、お話を重ねていくうちに、善光寺や仲見世が育んできた歴史や文化への畏敬、地域との絆を大切にしたいという思いをお聞きすることができ、それであれば共に新しい歴史を重ねていけるのではないかと思うようになりました。
 善光寺への参拝も、団体のお客様が中心だった時代から、個人のお客様へと主流が変化してきています。若い世代に人気のあるスターバックスさんが仲見世にできたことで、今まで以上に多くの方が善光寺を訪れ、仲見世散策を楽しんでいただけるようになったのではないかと思います。オープン後、市民の方からの推薦で長野市景観賞を受賞することができたのも、私たちが刻む歩みを見ていてくださるようで嬉しかったですね。

信州善光寺仲見世通りで
日々を丁寧に重ねていきたい。

 「スターバックス コーヒー 信州善光寺仲見世通り店」の店長として、初めて店舗に足を踏み入れたのは、まだオープン前の工事中のことでした。多くの職人さんたちが忙しく立ち働く熱気や、大きなパネルに繊細な筆遣いで美しい立葵を描くアーティストさんの真剣なまなざしを見て、歴史ある善光寺仲見世通りに新店をオープンさせることへの責任と高揚を感じたことを覚えています。
 「仲見世通り店」を訪れるお客様は、店内に入ると、まず全体を見渡して驚かれる方が多いですね。「賑わいと静寂、光と影」をコンセプトに、木造の日本家屋ならではの陰影が美しい店内には多くの県産木材が使用され、落ち着きのある空間が広がっています。善光寺の寺紋である立葵のウエルカムアートや、壁面に飾られたタペストリーの鮮やかさも印象的ですし、2階にはスターバックスでは珍しい小あがりのスペースもあります。天井には当時の梁がそのまま活かされており、靴を脱いでゆったりとくつろぐことができます。美味しいコーヒーとともに、この地ならではの静謐な時間を楽しんでいただければ嬉しいです。
 2020年の3月にオープンしてからの2年間は、コロナ禍の中での2年でもありました。厳しい状況が続きましたが、地域の皆さまに助けられ、思いやりの数々に心が温かくなる出来事もありました。いただいたご恩を胸に、仲見世通りの店舗のひとつとして地域に根差し、愛される店になれるよう、スタッフ全員で質の高いサービスを目指していきたいと思います。
 この春は、6月29日まで善光寺御開帳が開催され、全国から多くの参拝者が訪れます。仲見世通りも感染対策をしっかりと行い、安心してご参拝いただけるよう地域全体で対応しています。私たちも、いつも通りの笑顔とサービスを心掛け、ご来店いただくお客様をお迎えしたいと思います。

(2022年5月号掲載)