一頭一頭、思いを込めて
伝統あるわら駒を
桐原の地で
作り続けています。

宮入 久
Hisashi Miyairi
「桐原のわら駒」を知ったのは、40代の頃です。縁あって桐原に引っ越してきた際に、桐原牧神社の春季例大祭で奉納されているわら駒を見て、これは素晴らしい伝統行事だと感激したんです。
ベテランでも一頭作るのに半日はかかる「わら駒」。各パーツ作りをはじめ細かな作業が多いですが、作るのは楽しいですね。「今回はここがうまくいった」とか「ここのバランスが良くなかったな」など、一頭一頭違います。わら駒を作りはじめて15年以上経ちますが、毎年50頭以上作ってもなかなか納得のいくものは仕上がりません。それでも毎年くじ引きでわら駒を当てた人の笑顔を見るたびに、作ってよかったなと思いますし、喜んでくださる人の顔を思い浮かべながら、心を込めて作っています。
その活動のひとつとして、地域の子どもたちや住民に向けて「わら駒作りを教える講習会」を毎年開催しています。桐原牧神社の境内には、旧公民館を活用した「桐原わら駒会館」があり、ここを拠点にして子どもたちに「わら駒作り」を体験してもらっています。子どもたちは毎年みんな大喜びでわら駒を作っていますよ。今、桐原の町にはもう水田がない状況で、わら駒のわらも協力してくださる他の地域の農家さんにお願いしています。だから桐原の子どもたちにとって、わらは馴染みがないものになってしまいました。だからこそ、小さい頃からわらと親しみ、自分でも「わら駒」が作れる、ということを体感してほしいと思っています。(2019年3月号掲載)