北信州・山ノ内町
宇木の古代桜を
これからも守り続け
未来へとつないでいきたい。

青木 孝一
Kouichi Aoki
北信州・山ノ内町の宇木地区で生まれ育った自分にとって、千歳桜はとても身近な存在です。宇木の千歳桜は、1967(昭和42)年に長野県の天然記念物に指定されたエドヒガンザクラで、推定樹齢約900年といわれています。その昔は「月見桜」「見返り桜」などと呼ばれていましたが、1928(昭和3)年に天皇御大典を記念して「千歳桜」と命名されました。900年前といえば平安時代。遥か古より今日まで、宇木の地を守り続けてきた桜なんです。地区には保存会があり、毎年春には観桜会が開催されています。観桜会では、千歳桜の下に祀られている桜下農蚕神社で農作物の繁栄を願う祭礼を執り行った後、区民が専用の浴衣や法被を着て、千歳桜小唄の踊りを奉納します。子どもの頃からずっとこの風景を見てきた私たちにとって、千歳桜は暮らしと密着した大切な宝です。
宇木地区には、千歳桜の他にも美しい桜が各所にあります。隆谷寺の桜は樹齢約400年。シダレザクラの原種といわれる珍しい桜です。宇木区民会館前には樹齢300年を超えるシダレザクラがあり、北信五岳を見渡せる高台には大久保の桜があります。大日庵の源平しだれ桜は町の天然記念物に指定されており、白い花弁のシダレザクラが美しく咲き誇ります。(2020年4月号掲載)