松川渓谷沿いに8つの温泉が連なる、信州・高山村。幽玄な山郷の中腹に位置する山田温泉「緑霞山宿 藤井荘」は、江戸末期よりお客様をお迎えし、森鷗外や与謝野鉄幹・晶子、菊池寛、会津八一などの文人墨客も愛した正統派の旅館です。
そんな伝統ある藤井荘のお客様をお迎えするおもてなしとして、たむらの「蕎麦朧」が選ばれています。今回は、7代目女将である藤沢晃子さんにお話を伺いました。
旬彩菓たむらを代表する菓子である蕎麦朧は、長野県産の上質な小麦粉、戸隠産の最上級蕎麦粉、和三盆、カルピスバター等を用い、一つひとつ手作業で丁寧に仕上げた、たむらオリジナルの和菓子です。
東京育ちの私が高山村を訪れたのは、藤井荘6代目の主人と出会ってからでした。嫁いで以来、日々移り変わる渓谷の美しさに心を奪われ、今も飽きることはありません。当時は毎日100人以上のお客様をお迎えしていたので大変ではありましたが、楽しかったし、やりがいもありました。「藤井荘に泊まりたい」と訪れてくださったお客様が、笑顔になる瞬間が嬉しくて。その思いはずっと変わらず、常にお客様が心からやすらぎ、くつろいでいただけるひとときを提供できるよう、スタッフ一同心掛けています。高山村は、村全体に流れる空気感がとにかくあたたかいんです。昔から温泉で裸の付き合いをしてきたからでしょうか。かしこまらずに楽しむ、そんなあたたかさをお客様にも感じていただきたいと思っています。
藤井荘では、温泉はもちろんのこと、提供するお菓子やお料理も「地の物」にこだわっています。旬彩菓たむらさんとの出会いは、もう20年以上も前になりますね。たまたまお土産で「蕎麦朧」をいただいて食べたのが、きっかけです。ふわりと抜ける蕎麦の香りやホロホロとほどけていくような口当たりに、これは美味しいと。すぐに社長さんにお電話をして、藤井荘のおもてなし菓子として、「蕎麦朧」を使いたいとお願いしました。
(2023年12月号掲載)