渋の源泉を守り
感謝して湯を引くことで
渋温泉を訪れる皆さまに
温泉を楽しんでいただきたい。

西山 平四郎
Heishiro Nishiyama
北信濃の山々に積もった雪が、春の訪れとともに解け始める4月中旬。まだ日中でも寒さが厳しい中で行われるのが、源泉から渋の温泉街へ湯を引くパイプ、「引湯管」の掃除です。
引湯管を伝って流れてきた源泉は、「分湯枡」を経由して、温泉宿や外湯、一般家庭へと引かれていきます。開湯1300年の歴史の中で、渋温泉全体で守ってきた大切な源泉ですから、掃除も旅館組合の役員だけでなく、一般住民や商店など、湯の権利を持つ全員が参加して行われています。引湯管の掃除以外にも、年1回の「源区」内の掃除や、毎年秋に行われる「旧管」の掃除など、温泉を守るために年間を通して、さまざまな作業があります。当地では昔から、「御手馬」といって地域住民が力を合わせて地域の共同作業を行ってきました。時代は変わっても、自分たちの地域、自分たちの湯は、自分たちで守る姿勢を忘れないようにしたいと思っています。(2025年9月号掲載)