「一目十万本」といわれる、あんずの里。
生まれ育ったこの故郷を
変わることなく次世代へと繋ぐために、
できることをひとつずつ。

商品開発コーディネーター横嶋 孝子
Takako Yokoshima
生まれも育ちもここ、千曲市の森地区です。生まれた時から杏があるのは当たり前で、森地区の人間にとって杏はとても身近な存在でした。小さい頃から1年に一度のお花見が待ち遠しくて。小学生の頃には家の商売を手伝って杏ジャムを売っていた記憶があるのですが、たくさんの観光客の方たちとふれあったり、お天神さんに行ったりと、薄紅色の花が咲き誇る杏の畑の中を駆け回っていましたね。普段、人がいない町が賑やかになるのが本当に楽しくて仕方ありませんでした。
既に定番のジャムやシロップ、干し杏などは作っていたので、それをベースにさまざまな商品を開発していきました。例えば「杏紅茶」は、干し杏をベースにハーブをブレンドした無添加のフルーツ紅茶です。昔からあったものを別の形に加工することで、より幅広い年齢層の方に楽しんでいただけるお土産に変わりました。大勢の方に手に取ってもらいたいので、味はもちろんパッケージにもこだわっています。はじめは「あんずの里」を訪れた方に買って帰ってもらうことを前提に商品開発をしていたのですが、今は逆に、商品を味わってもらうことで、「あんずの里に行ってみたい」と思ってもらえるようにしたいと考えています。商品が、人を動かすこともあると思うんです。
そんな中、住んでいる私たちができることをやろうと、3年前に花さかフェスタ実行委員会を立ち上げ、花の時期に合わせて「花さかフェスタ」を開催しています。まずは住んでいる人や地元の子どもたちが楽しめること。そんな中で子どもたちが、「おじいちゃんの杏の木を切らずに守っていこう」と思えるようになってほしい。ゆっくりでも、意識改革に繋がっていってほしいと思っています。そしていつか、「あんずの里」を昔のような素晴らしい景観に戻していきたいのです。(2017年8月号掲載)