• 少子化や人口減少による労働力不足など
    今の日本で社会問題とされている多くの課題を、
    少しでも改善していくために制定された育児・介護休業法。
    今年新たに改正される内容について
    長野労働局、雇用環境・均等室の前田さんに伺いました。

育児・介護休業法をご存知ですか

 子どもができたとわかったとき、皆さんはどんなことを感じたでしょう。一番はじめは「嬉しい!」でしょうか。パートナーやご家族とともに、新しい命の芽生えを喜んだことと思います。そして、その後に来るのは「不安」かもしれません。未知の体験や子育てへの不安。そして、仕事への不安などを感じる方も多いかと思います。
 妊娠や出産によりキャリアを諦めることなく、継続して働きつづけることができるように定められた法律が、「育児・介護休業法」です。平成3年にベースとなる「育児休業法」が制定され、平成7年に「育児・介護休業法」として改定されたこの法律は、今年さらに内容が検討され改正されることになりました。

パートや契約社員にも育児・介護休業法は適用

  「育児・介護休業法」とは、子どもが1歳になるまで取得できる育児休業や、子どもの看護休暇、所定労働時間の短縮措置、いわゆる時短勤務などについて、労働者の権利として取得できるよう法律で定めたものです。
  また平成29年、つまり今年の1月1日から、パートや契約社員の方がさらに育児休業を取得しやすいよう、その条件が緩和されました。
 改正された法律では、①申出時点で入社1年以上であること、②子どもが1歳6ヶ月になるまでの間に雇用契約が満了し、更新されないことが明らかでないこと、の2点に該当していれば、育児休業を取得することが可能となっています。
 ちょっと難しい言い回しですが、例えば1年契約のパートを何年も更新している人は、実績として過去1年以上継続して働いていますし、その後の契約がなくなることが〝明らかではない〟ので、育児休業が取れます。つまり「妊娠がわかった時点で次回の契約更新はしませんよ」というのは、あきらかに妊娠・出産を契約解除の要因としており、それは法律では認められないということです。
 「雇用契約が更新されなくなることが明らか」である場合とは、契約時に「2年契約で更新はしません」とか、「このプロジェクトの期間のみの限定契約です」といった場合が想定されますので、それ以外の場合は〝明らかではない〟に該当するといえます。
 まだまだ情報が浸透していないため、「パートだから妊娠したら仕事を辞めなくちゃいけない」と思っている人がいます。本来であれば企業から正しい情報が伝えられるべきですが、残念なことにそれが曖昧になっているのが現状です。会社に妊娠を報告したら、「じゃあ辞めてね」と言われて納得してしまったり。それではいけません。
 妊娠したことを企業に申し出たときに「うちの会社ではこうです」と言われた内容が「育児・介護休業法」で定めた内容と違っていた場合は、一度労働局までお問い合わせください。

10月1日より育児休業が 再延長できるように

 さらに今年の10月1日より、育児休業の取得期間が延長できるようになります。
 育児休業は、基本的に子どもが1歳になるまで取得できますが、保育園に入れない等の事情がある場合、今までも1歳6か月まで延長できるようになっていました。今回の改正ではそれが最長で2歳まで再延長できるようになったのです。
この改正の背景には、待機児童問題があります。保育園は基本的に4月入園のため、例えば5月に生まれたお子さんの場合、1歳まで育児休業を取得すると仕事復帰の5月の時点では保育園に入園できず、半年延長しても11月で問題は解決しません。そのためもう6ヶ月間の再延長により、次の年の4月に入園できるよう休業期間を延長できるようにしたのです。
   現在、全国では81・8%の女性が育児休業を取っています(厚生労働省調べ)。長野県では97・1%の女性が育児休業を取得しており(長野県調べ)、全国と比べても長野県は多くの女性が働き続けていることがわかります。今後ますます人口が減少していく中、女性の労働力は非常に重要です。子育てとキャリアの両立が可能な社会を、みんなで考えていきたいと思います。

これって「マタハラ?」 と思ったら…

 妊娠、出産は女性にとって非常に喜ばしいことであり、また大変なことです。それなのに、心ない言葉を聞くことがあります。上司から「1年以上休むなら辞めてもらいたい」と言われたり、同僚から「どうせ休むんだから」と言われて、今まで参加していた会議に呼ばれなくなったり。育休後に復帰してきても、「時短勤務は認められない」と言われたり、「みんなやっているんだから夜勤もやって」とシフトを勝手に組まれてしまったり。
 このような会社の対応に、疑問や不安があった場合、すぐに労働局へご相談ください。法律違反が認められた場合には、企業に対して指導を行います。
 このような状況を放置している、もしくは行っている企業は、非常に大きな企業リスクを抱えているといってもいいでしょう。経営者と労働者がお互いに良い関係を築いていくためにも、まずは働いている私たち自身が正しい知識を持ち、場合によってはきちんと権利を主張しながら話し合うことが大切です。それが会社そのものを良くするための第一歩になるかもしれません。

(2017年10月号掲載)

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