ベテランでも一頭作るのに半日はかかる「わら駒」。各パーツ作りをはじめ細かな作業が多いですが、作るのは楽しいですね。「今回はここがうまくいった」とか「ここのバランスが良くなかったな」など、一頭一頭違います。わら駒を作りはじめて15年以上経ちますが、毎年50頭以上作ってもなかなか納得のいくものは仕上がりません。それでも毎年くじ引きでわら駒を当てた人の笑顔を見るたびに、作ってよかったなと思いますし、喜んでくださる人の顔を思い浮かべながら、心を込めて作っています。
また、自分の腕を磨くだけでなく、この伝統ある「桐原のわら駒」の技術をしっかり後世に伝えていくために、「桐原牧(わら駒)保存会」のメンバー全員で頑張っています。平成14年には、長野市文化財保護条例による「選定保存技術」にわら駒作りの技術が選定され、制作者は「技術保持者」として認定されることになりました。現在、保存会の会員は25名ですが、そのうち技術保持者は10名です。今後は、わら駒作りの層を厚くするとともに、「技術保持者」の人数を増やしていきたいと考えています。
その活動のひとつとして、地域の子どもたちや住民に向けて「わら駒作りを教える講習会」を毎年開催しています。桐原牧神社の境内には、旧公民館を活用した「桐原わら駒会館」があり、ここを拠点にして子どもたちに「わら駒作り」を体験してもらっています。子どもたちは毎年みんな大喜びでわら駒を作っていますよ。今、桐原の町にはもう水田がない状況で、わら駒のわらも協力してくださる他の地域の農家さんにお願いしています。だから桐原の子どもたちにとって、わらは馴染みがないものになってしまいました。だからこそ、小さい頃からわらと親しみ、自分でも「わら駒」が作れる、ということを体感してほしいと思っています。
今年ももうすぐ、桐原の春季例大祭の時期がやってきます。保存会で作るわら駒が神社に奉納され、くじ引きで授けられます。今年は巨大わら駒も登場しますので、ぜひ3月8日は桐原牧神社の春季例大祭にお越しください。