• 皆さんは「働き方改革」という言葉を耳にしたことがありますか。
    誰もがイキイキと働ける社会をつくるために
    私たち一人ひとりが、「働くルール」を知ることで、
    雇用する側もされる側も気持ちよく働ける環境づくりを目指しましょう。

Q. 2年ほど前から正社員として働いており、これまで欠勤もしていません。子どもが小学校を卒業するので、卒業式に出席するため休みをとりたいのですが、会社が休ませてくれません。

A. 「年次有給休暇」をご存知でしょうか。「年休」や「有休」といった言葉でやりとりされている会社も多いと思います。
 年次有給休暇制度は、労働基準法第39条で定められています。入社後、半年以上継続して働き、全労働日の8割以上出勤している人であれば取得できる休暇のことで、半年以上で10日。以降1年ごとに日数が増えていきます。正社員はもちろん、パートやアルバイトでも条件を満たせば取得することができます(注1)。もちろん、取得による賃金カットはありません。
 また有給休暇は、その利用目的について会社側から問われることはありません。お子さんの卒業式への出席など家族行事でも、ただ遊びにいくだけでも取得することができます。
 質問者さまは、半年以上勤務、8割以上の出勤という条件をクリアされていますので、年次有給休暇を申請し、取得することができます。これに対して会社側が、取得させない、または無断欠勤扱い、賃金カット等を行った場合、違法となりますので労働局までご相談ください。
 留意すべき点として、企業側には、「事業の正常な運営を妨げる場合」においてのみ、有給休暇取得の時季を変更する「時季変更権」がありますが、事前周知がない場合、社員は自分が休みたい日に有休を取得する権利があります。
 今年(2019年)から順次施行される「働き方改革関連法」。これによって労働基準法も改正され、4月1日以降、年10日以上年次有給休暇を取得する権利がある社員には、年5日の有休取得が義務付けられることになりました。
 日本は海外に比べて有給休暇の取得率が低く、大きな問題となっています。常日頃から、休暇取得時の業務配分等について社内でコミュニケーションを図り、働く者の権利として有給休暇を積極的に取得できるような会社、社風になるとよいですね。
 ただし企業によっては介護休暇に関する労使協定を締結し、適用除外となる場合があります。雇用期間半年未満、週所定労働日数2日以下の方は、労使協定があるか確認しましょう。
 「介護休暇」の申請を出されたら、会社は拒否することはできません。また、介護休暇を取得することで、解雇や降格、取得した分以上の減給、賞与の削減といったことも法律で禁止されています。家族の介護は、誰にでも起こりうることですので、介護に関するさまざまな制度をうまく活用して、仕事と介護を両立させることができるといいですね。何かわからないことがあれば、長野労働局までお気軽にご相談ください。

注1/アルバイト・パートの場合、①6ヶ月以上の継続勤務、②全労働日の8割以上の出勤、③週5日以上の勤務または週の労働時間が30時間以上、という3つの要件を満たせば正社員と同じ日数が付与されます。週4日以下の勤務かつ週の労働時間が30時間未満の場合でも、所定の労働日数に応じて有給休暇が付与されます。詳しくは労働局へお問い合わせください。

Q. 3年前から働いている会社を辞めたいと、会社に退職届を提出したのですが、次の人が決まるまでは辞めてはいけないと言われてしまいました。

A. まず大前提として、労働者の意思による退職は、原則として「自由」です。どんな退職理由だとしても、会社を辞めたいという社員がいれば、会社は拒むことはできません。
 ただし、民法によって退職時のルールが定められていますので、そのルールに添う必要があります。民法627条1項では、「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する」と定められています。つまり、退職する2週間前までには、会社に対して退職することを伝えなければならないということです。2週間前までに伝えていなくても、退職できないわけではありませんが、会社から損害賠償を請求される可能性があります。年俸制等の場合は、3ヶ月前までに退職を申し入れることが定められています(民法627条3項)。
 逆に、短期アルバイトや契約社員など、契約期間に定めのある契約を結んでいる場合、契約期間満了前に退職することは契約違反となりますので、原則としてできません(民法628条)。ただし、やむをえない理由がある場合は、会社の合意を得て退職することができます。合意できずに退職した場合、損害賠償を請求される可能性があります。
 また、会社の就業規則に「1ヶ月前までに退職を申し出ること」等、規定されていることがあります。これは、会社側が業務の引継ぎや人事異動等にかかると思われる期間を考えて掲載しているものです。会社を退職する際には事前に就業規則をよく確認し、自身の業務引継ぎや有給休暇の消化なども検討した上で、退職日を決めましょう。問題なく会社を退職するためには、きちんとした段取りを踏むことが重要です。また、やりとりは書面として残しておくと安心です。
 質問者さまの場合、退職を申し出れば、次の人が決まらなくても2週間後には退職することができます。トラブルになりそうな場合、退職の意思表示を証拠として残しておくため、退職届を「配達証明付き内容証明郵便」で会社に送るとよいでしょう。またその際には必ず退職日を明記しておきましょう。証拠を残しておくことで、後から「退職するなんて聞いていない」などと言われても、意思表示したことを証明することができます。
 また、退職時に有給休暇の消化を拒否されることがありますが、残っている有給休暇は、退職日前であれば申請して取得することができます。このほか、損害賠償を請求された、退職金が出ない等、退職についてトラブルがあった時は、一人で悩まずに労働局までご相談ください。

(2019年3月号掲載)

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