• いざという時の「避難行動」と「確認事項」をまとめた行動予定表。
    それが、自分たちの命を守る「マイタイムライン」です。
    マイタイムラインを作るためには、まず自分の家の状況を知ることが大切です。
    マイタイムラインを作る上で留意すべき点を
    長野市危機管理防災監、鎌田富夫さんにお話を伺いました。

     

     

 先月号では、特に浸水が深いエリアや氾濫流による家屋倒壊危険区域、河岸侵食による家屋倒壊危険区域に自宅のある方を中心に、すべての方に留意してほしい点も含め、お話を伺いました。
 今回は、さらにハザードマップをどう活用していくのかを、お聞きしていきたいと思います。

──今回のハザードマップを見ると、かなり広い地域が浸水エリアになっています。

 今回配布した「長野市洪水ハザードマップ」は、国・県が公表した、想定される最大規模の降雨による浸水想定区域図のうち、千曲川、犀川、裾花川、浅川、鳥居川、蛭川の浸水想定区域図をすべて重ねて表記しています。
 ここで確認してほしいのが、各エリアマップのほかにもう1冊、注意事項等が書いてある冊子です。各エリアマップと合わせてセットで封筒に入っています。
 そちらを見ていただくと、それぞれの川ごとに浸水想定区域が掲載されています。ご自宅のある場所で照らし合わせてみてください。氾濫する川によって、浸水のエリアや深さが変わることが分かると思います。ここから、「自分の家が浸水するのは裾花川の時で、千曲川や犀川では浸水しない」等、より詳しく読み解くことができます。
 それが分かれば、大雨の際にどの川の水位に一番気をつければいいのかが分かります。また、避難行動を考える際に、「犀川が氾濫しそうな場合は自宅待機がベスト。裾花川が氾濫しそうな場合は早めに浸水外エリアを目指す」等、より具体的な行動を立てることができます。

──なるほど。川ごとにチェックすることも重要なんですね。

 水位が上昇する前の早い段階であれば、車での避難でもいいと思います。特に小さなお子さんやお年寄りがいるご家族は、早めに車で浸水エリア外へ移動することも考えられます。
 ただ、雨が非常に強い、道路が冠水しているといった状況での車の避難は危険です。冠水した道路は下が見えないため、側溝や小さな川との境が分からなくなってしまうんです。自分の前の車が側溝にはまっただけで、通行止めと同じ状況に陥ってしまう場合もあります。また、車が走れるのは20 cmくらいまでで、それ以上になると車が動かなくなり、最悪、閉じ込められることもあります。車で避難することを考えるのであれば、少なくとも警戒レベル3での避難としてください。
 いずれにしても、自分の家は危険なエリアだから、他の人より一段階早めに動かないといけない、ということだけは認識していただきたいと思います。

──早めに遠くへ避難しても、浸水外エリアの避難所は開設されていないのではないですか。

 昔から水がつきやすい地区では、地域の中で「佐久・上田で大雨が降れば6時間後には長野が増水する」などの知識が伝えられていたりしますので、地域の方と交流を持って、住んでいる土地の特徴などを事前に知っておくといいかもしれません。
 また、今回のマップはいわゆる内水氾濫については記載されていません。内水氾濫とは、河川の洪水による浸水(外水氾濫)ではなく、川に水が流れ込めなくなって内側で起こる浸水です。例えば支川が本川に合流する場所では、本川の水位が上がると水が逆流して溢れることがあります。また、側溝や排水路で処理しきれずに水が溢れる場合もあります。水門がある場所では、水門を閉めると浸水の危険が高まります。支川に近いエリアや水門に近い場所は、より注意が必要です。

──住んでいる地域の情報を入手した上で、避難行動を決めることが大切なんですね。

 昨今は町内での交流が少なくなり、隣に住んでいる人が分からないという方もいらっしゃるかと思いますが、防災という観点から考えると、できるだけ町内の方と交流を持ってほしいと思います。自分にとって必要な情報を得られるだけでなく、「お隣に一人暮らしのお年寄りが住んでいる」と知っていれば、いざという時に声を掛けてあげることもできます。互いに声を掛け合って早め早めに避難することができれば、確実に命を守る避難行動をとることができます。
 それからこれはお願いですが、浸水エリア外の方は、避難してきた方の手助けをしていただきたいです。災害時は「自助」「共助」の力が必要です。

──避難場所を決めるときに注意すべきポイントなどはありますか。

 今回配布したハザードマップの縮尺は、大人の方の親指と人差し指を広げた長さが「大人がゆっくり歩いて1時間くらい」の距離になると思いますので、それを目安にして避難場所までの時間を考えてみてください。
 避難場所を決めたら、一度避難ルートを歩いてみてください。歩いてみると「ここは崖崩れが起きるかもしれない」とか、「川が近くて冠水したら畑と道の区別がつかないかもしれない」など、問題点が見えてくることもあります。その場合はルートを変更したり、避難場所を変更したほうがいいかもしれません。
 また、家族が同じ場所にいて一緒に避難できるとも限りません。避難場所や避難方法を家族で確認しておくとともに、災害用伝言ダイヤル「171」の使い方を確認しておきましょう。また、災害時はSNSのほうがつながりやすいといった事例もあります。家族でグループを作っておくのもおすすめです。

(2019年11月号掲載)

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