• 自分がこれまで培ってきた
    知識と経験を活かし
    長野から持続可能な社会に
    貢献していく。

幼少期の経験が
今の自分の礎になっている。

 菅平で生まれ育った、生粋の長野人。大自然に囲まれて、物はなくとも大勢の家族とともに賑やかでやんちゃな日々を過ごしました。当時、家が長野電鉄のバスの運転手さんや車掌さんの宿泊場所になっていて、皆さんに可愛がってもらいましたね。大きなバスを間近で見させてもらったり、ハンドルを握らせてもらったり。もともと動くものが好きだったこともあって、自動車への憧れが自分の中でどんどん大きくなっていきました。
 高校は、当時珍しかった「自動車科」へ進学。日本全体がモータリゼーションに湧く中、車に触れられることに喜びを感じながら必死に学びました。その甲斐あって首席で高校を卒業し、県内の大手自動車販売会社に就職。そこからエンジニアとして24年間、車の技術革新とともに技術畑を歩みました。
 そのままエンジニアとして勤め上げる気満々だったのですが、ある時社長から、「おまえは新規営業に向いている」と営業への転換を薦められたんです。最初は断っていたのですが、法人営業として全県下を網羅し、他の自動車会社と契約している企業を攻略する仕事だと言われて興味が湧いて。営業は初めての経験でしたが、人の懐に入って絆を結び、契約に結び付けた時の達成感は格別でしたね。営業として28年、その中で多くの人と出会い、新たな仕事に挑戦できたことは自分の宝となっていますし、その機会を与えてくれた社長には今でも感謝しています。

持続可能な社会のために
日々、新たな挑戦を続けていく。

 退職後、オンサイテック株式会社を起ち上げたのは、在職中に描いた「夢」がきっかけでした。ある仕事の中で「改質リグニン」という新しい素材に出会い、「これからは循環型社会を目指すべきだ」と、ある席で語ったところ、松本にある企業の社長さんから、資本出資するというお話をいただけたんです。
 「改質リグニン」とは、日本固有の樹木であるスギから作るバイオ由来の新素材で、熱に強くて軽く、プラスチックの代わりになる素材としてプラント建設も始まっています。現在、国立研究開発法人である森林総合研究所が中心となって「リグニンネットワーク」を展開。オンサイテックも加盟し、今後、「改質リグニン」の普及に尽力していく予定です。
 また、リグニンを知るきっかけとなった有害鳥獣の有効活用についても、新たな鳥獣対策システムを構築していきたいと考えています。最近ジビエがブームとなり、長野県内でもジビエを出す店が増えてきていますが、その安全性については、まだ道半ばといったところです。鹿やイノシシといった野生動物は、狩猟後1時間以内に内臓等の処理をしないと食べられなくなるため、現地でいかに安全に素早く解体し、加工工場まで衛生的に移動することができるかが重要です。この課題に、これまでの知識と経験を活かして取り組んでいくつもりです。
 また、オンサイテックは次世代に対応した超小型モビリティ「BLAZE(ブレイズ)」の正規販売店でもあります。ブレイズは公道を走れるEVスクーターやバイクなどで注目を集め、コロナ禍での新たな通勤手段としても需要が高まっています。長野市で実物を見ることができるのは当社だけ。興味のある方は一度見に来てもらえれば嬉しいですね。うちの社員もこれで通勤していますが、長野ではまだ珍しいので注目の的ですよ。
 「改質リグニン」の普及と「鳥獣対策」、「EVモビリティ」の促進。いずれもベースにあるのは循環型社会の実現であり、ゼロカーボンへの挑戦です。私たちオンサイテックの取り組みは、今、始まったばかりです。

(2021年7月号掲載)