• お菓子を通して
    お子さまからご高齢の方まで
    誰もが笑顔になる
    「幸せな瞬間」を届けたい。

料理の道を目指したことが
今の自分のベースになっている。

 長野市生まれの長野市育ち。母の実家が鬼無里だったので、夏休みや週末など、よく遊びに行っていましたね。子どもの頃の思い出といえば、鬼無里の野山を縦横無尽に駆け回っていたことを思い出します。
 高校卒業後、料理人を目指して上京し、服部栄養専門学校へ進学。在学中は、東京近郊の美味しいものをすべて食べ尽くすつもりで、さまざまなお店を巡りました。今の自分の「味」に対する基準は、この時に育まれたと思います。卒業後は飲食の世界へ飛び込んだのですが、店の方針と合わずに悩む日々を過ごし、一度、原点に立ち返ろうと長野に戻ってきました。
 お土産などの企画製造販売を展開している父の仕事を手伝いながら、今後の自分を模索する中、思い出したのは料理人を目指した頃の夢。軽井沢に店を出せる料理人になりたいという願いを、お土産というジャンルなら叶えられるのではないか。そう気づいた瞬間から動き出し、試行錯誤の上、完成したのが「軽井沢トルタ ドゥーブルタルト」です。信州産のクリームチーズを使用し、コーヒーとプレーンの2つの味を一度に楽しめるタルトは、軽井沢トルタの原点であり、現在も販売しています。ここから、次の新しい夢がスタートしました。

信州の素材を活かし
地域の人が誇れるお菓子を。

 タルトをひっくり返して、軽井沢トルタと命名した商品名を、そのまま社名にして起業。まずは地元に直売店を構え、長野の素材を活かした次のスイーツを、と考えていた時に出会ったのがバスクチーズケーキです。たまたま東京で食べる機会があり、これを信州産のクリームチーズで作ったら絶対美味しいはずだと確信。そこから試作を繰り返し、信州産の甘みのあるクリームチーズにニュージーランド産の酸味の強いクリームチーズをブレンド。さらに北海道産の生クリームを加えて仕上げることで、濃厚でなめらかなバスクチーズケーキが完成しました。ケーキの47%がクリームチーズなので、チーズの風味をしっかりと楽しめる、自慢の一品となりました。
 2019年、若里に「軽井沢トルタファクトリー」をオープン。当時はローソンが「バスチー」を発売するなど、バスクチーズケーキがブームになっていたこともあり、ありがたいことに若里店にも多くのお客さまにご来店いただきました。その後、2021年8月に高田店をオープンさせ、地域の皆さまに、軽井沢トルタのバスクチーズケーキを楽しんでいただいています。
 現在は、バスクチーズケーキの美味しさを、さらに幅広く楽しんでいただけるよう、新商品の開発にも力を入れています。365日24時間、常に頭のどこかで考えていて、美味しいものを食べると「これは合うかな、どうかな」と考えるクセがついてしまいましたね。ほぼ毎週、試作を作って家族に食べてもらっているのですが、子どもは正直です。言葉で言わなくても、美味しくないと残すんですよ。逆にペロッと食べる姿に、「お、これはいけるか」と思ったりします。一番身近で、一番厳しいお客さまですね。
 地元の農家さんとの出会いも、新たな発想につながっています。小布施の栗農家さんから仕入れた栗で作った「モンブランチーズケーキ」は最高でした。現在はチーズ×素材で商品を展開していますが、今後は、信州の食材をメインとした新ブランドも企画・開発したいと考えています。軽井沢トルタの志として掲げた、「本物を創り、本物を届ける」を忘れずに、地域の皆さまに喜ばれ、誇りに思ってもらえるスイーツを作りたい。夢は広がるばかりです。

(2023年2月号掲載)