• 心が動かされること
    好奇心を刺激されること
    それこそが
    アートを楽しむ原点。




      • ISHIKAWA地域文化企画室

        代表 石川 利江

        Rie Ishikawa

興味や好奇心の赴くまま
やりたいことに突き進んで。

 長野で生まれ、幼い頃に東京へ。祖父母が長野に居ましたので、小学校1年生の頃から夏休みになると一人で電車に乗って、長野に遊びに来ていました。当時から周りの大人たちをよく観察している、自立した子どもだったと思います。祖母が非常に面白い人で、「これからの時代は女性もやりたいことをどんどんやっていいんだよ」と、私によく言っていましたね。祖母の生きた時代は封建的な思考が色濃く残っていましたから、自分がやれなかったことを私に託したかったのかな、と今になって思います。そのおかげか、人と比較せずに自分のやりたいこと、興味のあることに挑戦する人生を歩んできました。
 伝統芸能もそのひとつです。大学1年の時に誘われて歌舞伎を見にいってから虜となり、今日までずっと追い続けています。学生の頃はそれこそ月に十何回と歌舞伎座に足を運びましたね。当時は学割三等席が500円くらいで歌舞伎を見ることができたんです。好きが高じて現在は、MIDORIカルチャーで歌舞伎の世界の楽しさを伝えています。

アートと地域の
新しい在り方を模索していく。

  大学を卒業後、東京で編集の仕事をしていた時に知り合ったのが、アートの世界の人たち。自分という「個」で極めていくアートの世界は非常に刺激的で、歌舞伎の世界とはある意味真逆の、自由な発想、自由な世界に惹かれるものがありました。
 30代になって体調を崩して長野に帰っていた頃、全国で「ガウディ展」を企画していた知人の北川フラムさんから、「長野でガウディ展をやりたいんだけど」と連絡があって。私も深く考えずに、「面白そう」と引き受けたんです。そこからは試行錯誤の連続でしたが、結果として展覧会は成功を収め、この経験が、私を長野に留まらせることになりました。というのも、80年代の長野にはギャラリーがほとんど無かったんです。県内には素晴らしい作家さんが大勢いるのに、発表する場がない。「だったら自分でやってみよう」と思い立ってしまったんですね。その後は、講座型のカルチャーセンターやギャラリーの運営など、いろいろなことに挑戦しました。県や市の審議会に呼ばれることも多くなり、「エコール・ド・まつしろ」ではプロデューサーとして、文化で地域を活性化させていく新たな可能性を感じることもできました。慌ただしい毎日でしたが、充実した楽しい日々でもありました。
 とはいえ、ずっと走り続けてきたので、今後は少し落ち着いて、アートと地域の在り方やアートの新しい発信手法を考えていければと、昨年秋にギャラリーを閉めてR︲DEPOTに小さな事務所を構えました。今は、月1、2回のペースでR︲DEPOTのスペースを活用した講座を開くほか、6月27日(火)から7月2日(日)まで、ギャラリー82で「小山憲市紬織展」を、11月14日(火)から11月26日(日)まで、ホクト文化ホール1Fギャラリーにて「小山利枝子展 FLOWER POWER」を予定しています。また、7月から開催される予定の「シンビズム5」や、「まつしろ現代美術フェスティバル」にも関わらせていただいています。アートとふれあう中で、心が動く瞬間、感動する瞬間をお届けしたい。アートが身近にある町の楽しさを提案していきたいと思っています。

(2023年4月号掲載)