• 学生たちとともに
    長野に「灯」をともし続け
    まちに優しい風を
    吹き渡らせたい。

      • 長野県立大学 グローバルマネジメント学部

        学科長 教授
        築山 秀夫

        Hideo Tsukiyama

      • 長野県立大学
      • 長野市三輪8-49-7
      • https://www.u-nagano.ac.jp/

社会に対する関心、好奇心が
自分の道を決めた。

 長浜曳山祭で有名な、滋賀県長浜市の生まれ。小学3年生の頃からラジオの深夜放送を聴き、一眼レフでの写真撮影、天体観測、ラジオの海外放送、近代の歴史などさまざまなことに興味、関心のある子どもでした。世の中の不条理に憤りを感じ、社会を変えるにはどうしたらよいかと、小学5年の時に、母親に六法全書を買ってもらいました。
 目の前に確かに存在する「問題」の原因を知るために、どうすればよいのかを考え続け、最終的に社会構造を突き詰めて考える必要があると、社会学を学ぶために大学へ進学しました。
 大学で学びを深め、大学院に進んでからは地域社会学を専門として研究を進めました。ローカル・コミュニティは、全体社会の部分であり、機能別に区分された社会学より、多様な要素間の関連を総体的に把握することができるという点で魅力を感じました。ローカルなレベルでは、急激に世帯や家族が単身化していることがみえる。そのことから、これまでの家族を単位とした社会政策は、全く機能しないことがわかります。
 学べば学ぶ程、知りたい、研究を続けたいという欲求が強くなり、大学院卒業後は、非常勤講師をしながら研究を続けていました。そんな中で当時の長野県短期大学にご縁をいただき、講師として長野に拠点を移すことになったのです。

学生の学びを通して
長野を元気にしていきたい。

 赴任当時から、長野の皆さんには温かく迎え入れてもらいました。2018年に長野県短期大学から長野県立大学へとステージは変わりましたが、長野という地域で学生たちとともに実践を通して学びを深め、同時に地域の課題解決に少しでも参画、貢献できればと思っています。
 現在、学生たちと進めているプロジェクトは大きく3つあります。ひとつは、「戸隠みらい」プロジェクトです。戸隠地区住民自治協議会の皆さんとともに、戸隠のみらいビジョンを考えています。戸隠の魅力を活かし、課題を解決するためのワークショップが2月11日に開催され、学生を含め60人を超える参加者がグループワークを行い、戸隠の魅力アップのためのアイデアを出し合いました。今年度は、そのアイデアを具現化するための活動を展開する予定です。
 もう一つは、「門前まちづくりサロン」です。これは2020年12月から、毎月第4木曜日の夜に開催しています。きっかけは、学生たちの「まちづくりに興味はあるが、一歩が踏み出せない」という声でした。であれば、さまざまな立場でまちづくりに関わっている人や面白い人に出会える「場」を作れば、新たな一歩を踏み出せるのではないかと思ったのです。市会議員である箱山正一氏と共同開催し、オンラインで始めました。今年は、対面開催に舵を切り、より濃い討議的空間をつくることができればと考えております。
 最後に、今期から始めようとしているのが、「まちの図書館(仮称)」プロジェクトです。これは、長野の中心市街地である駅前の空洞化や空き家問題を解決しながら、学生やまちの人たちがふらりと立ち寄れる「居場所」作りを目指しています。まだ企画段階ですが、さまざまな人が気軽に集まる中から地域の課題を吸い上げ、皆で考える空間ができればと思っております。年配の方から土地の歴史を聞くだけでも、学生たちにとっては大きな実りです。まちのなかで、これまでのような共同性が解体してしまった今だからこそ、まちの灯になるような、ほっとできる空間を、学生たち、そして地域のひとたちとともに作ることができれば素敵ですね。

(2023年7月号掲載)