• 善光寺お膝元のみそ蔵として
    発酵の持つ力を
    一人でも多くの方に
    伝え続けていきたい。

母の味、母の教えが
今の自分の原点になっている。

 自然豊かな佐久の果樹農家で生まれ、りんごやぶどう、桃などを育てる父母の背中を見て育ちました。当時はまだ珍しいプルーンの栽培にも取り組んでおり、その恩恵を受けて、さまざまな旬の果実の「本物の美味しさ」を教えられましたね。
 私の母は、保存料や着色料、化学調味料などの添加物を嫌い、昔からある「みそ」や「しょうゆ」といった調味料を用いて、素材が本来持っている美味しさを活かす食事を作り続けていました。大人になるにつれ、外食などでいろいろなものを食べるようになりましたが、私の食の原点は、母が毎日作ってくれた素朴な味。子どもの頃に培われた味覚が、今の自分を形作っていると感じます。
 縁あってすや亀に嫁いでからも、自分の中にある軸がぶれることはありません。みそはもちろん、漬物やみその加工品などすや亀で作るすべての商品は、お客様に安心して召し上がっていただけるよう、添加物を使用していません。昭和60年に食事処を併設した現在の店舗をオープンさせた後は、義母の家庭の味である「くるみ味噌」を皮切りに、さまざまな商品開発に挑戦していますが、私たち自身が誇りと自信を持って作り続けられるものだけを、提案し続けています。

人の幸せは健康から。
そのお手伝いをしていきたい。

 以前、信大の先生にすや亀のみそを分析していただいたことがあるんですが、うちのみそは乳酸菌の種類が多いそうです。これは蔵付き酵母が影響していると思われ、同じ素材を同じ分量で仕込んでも、すや亀の味はすや亀にしか出せません。「うちのお味噌汁の味は、すや亀さんのみそじゃないと」と、長年ご愛顧いただいているお客様も多く、それぞれのご家庭の味になっていることを嬉しく思っています。
 みその加工品も数多く展開していますが、中でも平成元年に販売を始めた「みそソフトクリーム」は、長野のご当地ソフトクリームとして人気になりました。これは現店主が東京に行った際に、当時はまだ珍しかったさまざまな野菜のアイスクリームの存在を知り、「だったら、みそでもできるんじゃないか」と、思い付いたのがきっかけです。試作を開始してから約半年、試行錯誤を繰り返し、すや亀のみそ等3種をブレンドしたベストな配合を見つけ出しました。最初のひと口でふわりとみその香りを感じ、味はまるでキャラメルのような美味しさで、最後にわずかに塩味を感じる「みそソフトクリーム」。今も善光寺お膝元のみそ蔵スイーツとして、また善光寺参りの仲見世の名物として、多くの皆さまに愛されています。販売から30年以上経ちますが、先日も全国放送のテレビで取り上げていただき、とても嬉しかったですね。
 商品開発に本格的に関わるようになって10年以上経ちますが、商品を開発する際に意識しているのは、良質な素材を用い、安全で美味しく、そして手軽に楽しめるものであること。「味」を見極めることは非常に難しく、常に試行錯誤の連続ですが、最終的には自分が美味しいと思うもの、自分自身の味覚を信じて商品を仕上げています。今は共働きで子育てをするご家庭が多く、皆さん日々、忙しく過ごしていらっしゃいます。そんな方たちにも手軽に使ってもらえるような、「良い食品」を提案していきたいと思います。
 今、古より作り続けられてきたみその力、発酵の力が見直されてきています。すや亀はこれからも実直に、人の幸せの根源である健康のため、みそのある暮らしを提案し、みその持つ力を伝え続けていきたいと思います。

(2023年8月号掲載)