• 本当の意味で
    須坂を変えてくれるのは
    今、須坂で生きる
    高校生たちだと思う。

      • 須坂市 地域おこし協力隊

        まちなかリノベーション部門
        井上 陽介

        Yosuke Inoue

      • 須坂市 地域おこし協力隊
      • 須坂市中町202-1地域おこし協力隊 事務所
      • https://shinshu-kominka.or.jp/lets-try-project/

やりたいことをとことんやる
そう決めて生きてきた。

 兵庫県明石市生まれ。小さい頃から外遊びが大好きで、虫採りや探検など、友だちと一緒に走り回っていました。海まで3分くらいのところに住んでいたので、今でも波の音が懐かしくなることがあります。
 長野との関わりは、教員を目指して信州大学に進学したことがきっかけです。通っていた高校が「個」を重んじる教育方針で、悪いことをしても頭ごなしに怒るのではなく、「なぜ悪いのか」を問い、生徒が答えを出すまで待ってくれる先生方だったんです。中学時代に理不尽に怒られた経験があった自分にとっては衝撃的で。そんな体験から教員を目指したのですが、大学に入ってからスノーボードに目覚めてしまい、そこからはスノーボード中心の日々を過ごすようになりました。実は大学2年の夏にヒッチハイクで日本各地を旅したのですが、その時に車に乗せてくれた大人に、仕事や人生について問い続けたんです。そうしたら皆、「20代で何を成したかが大事だ。やりたいことがあるならとことんやるべきだ」と口を揃えて言うんですね。仕事も年齢も、生きる場所も違う大人たちが皆、そう言う。「じゃあ、そうしよう」と決めてからはブレなかった。大学を卒業後は、冬は日本、夏はニュージーランドで、スノーボードのライダーとして精力的に活動を展開しました。

須坂のまちと高校生をつなぐ
そこから見えてくるものがある。

 須坂市の地域おこし協力隊に応募したのは、自分がやりたいと思っていた空き家再生と、須坂市が求めていた地域活性の方向性が合致したことが大きかったですね。2021年に着任して地域の方々と関わる中で、「まち」を本当の意味で活性化するには、若い人たちが地域に出ていかないと変わることはできない、と強く感じるようになりました。
 そこですぐに須坂高校の先生に連絡を取り、まちづくりに興味のある生徒さんに声を掛けて、「今、須坂で何をやりたいか」を皆で話し合ってもらったんです。そうしたら「地域と関わりたい」「まちに自分たちの居場所がほしい」「自分たちでまちのために何かしたい」と、次々に言葉が溢れてきて。これは本当に嬉しかったですね。そこからは、あっという間でした。16人の熱意のある生徒を中心に「Let's try project」を発足したのが12月。ミーティングを重ねながら、まずは自分たちの活動の拠点を作ろうと物件を探し、2022年3月からリノベーションをスタートさせました。生徒たちにとっては初めての経験でしたが、自分たちで考え、自分たちで手を動かしました。そして今年の2月、高校生の学習スペース&交流拠点「coto2(コトコト)」がオープンしたのです。
 「coto2」の由来は、じっくりコトコト煮込むように自分たちの将来や須坂市のことを考えられたら、とメンバーが名付けました。既にさまざまな形で高校生の拠点として活用されています。また、この活動を見て自分も参加したいと、新たに市内3校を中心に36名の1年生がメンバーに加わってくれました。いくつかのプロジェクトが進行中で、中でも高校生主体のカフェ「Aile」は、来年1月オープンを目指し、リノベーションが始まっています。新たな「場」からどんな交流が生まれるのか楽しみです。
 この春、「Let's try project」に参加した高校生のうち何人かが、まちづくり系の学部に進学しました。須坂のまちづくりに関わった子たちが、志を持って専門的に学び、須坂に戻ってきてくれれば須坂は必ず変わります。そのためにも、この場所を守り、継続し、戻って活躍できる場を、私自身はもちろん、まち全体で大人たちが真剣に考えていかなければならないと思っています。

(2023年12月号掲載)