• 長野の美味しい
    野菜や果物の素晴らしさを
    楽しく伝えることで
    「食」の大切さを届けたい。

      • 奥信濃BUNZO
        オーナーシェフ

        小林 正和

        Masakazu Kobayashi

      • 奥信濃BUNZO
      • 飯山市飯山2529-1
      • 0269-67-0342
      • https://bunzoo.jp/

原点は飯山の和菓子屋。
寝る間を惜しんで学んだ日々。

 自然豊かな奥信濃、飯山で生まれ育ちました。小さい頃から活発で、中学、高校は陸上部。100mの短距離ランナーとして、11・3秒の記録を出したこともあります。そんな部活中心の日々の中、学校帰りに寄っていたのが、友達の家でもあった「かぢや儀兵衛」という和菓子屋でした。おやじさんが菓子を作る姿を眺めながら、どらやきやまんじゅうを食べる時間が大好きで。いつしか菓子作りに興味を持ち、図書館で菓子の本を探して読むようになりました。
 高校を卒業後、上京し、就職先の方の力添えもあって菓子の専門学校へ入学しました。当時は全国各地からさまざまな年代の方が学びに来ていて、技術面だけでなく多くのことを吸収できた1年だったと思います。卒業後、22歳の時に茅ヶ崎の「フランス菓子ドラペ」に弟子入りし、そこから本格的な菓子職人としての人生を歩み始めました。
 師匠は「技術は見て盗め」という人で、言葉通り師匠がやっていることを後ろから見て覚えていきましたね。3年間で自分の菓子作りに自信が持てるようになり、25歳で神戸にあった「スイス菓子ハイジ」へ。早朝から夜中まで働きながら、ここで本格的にチョコレートを学びました。当時、ドイツやスイスでチョコレートを学んだ方がいらっしゃって、毎日営業が終わった11時過ぎから教えを請い、技を磨いていきました。今、私が作っているトリュフは、この時に学んだ作り方を実直に守り続けています。

チョコレートを通して
新たな挑戦に挑んでいきたい。

 ハイジで学んだ後は茅ヶ崎に戻り、「フランス菓子サフラン」を経て、32歳の時に平塚で独立。1982(昭和57)年2月6日に、初めての自分の店、「スイス菓子シルスマリア」を立ち上げました。当時、焼き菓子やケーキの隣に、さまざまな種類のトリュフチョコレートが並んでいるお店は珍しかったと思います。私の作るトリュフは、ベルギーのクーベルチュールチョコレートを使い、完成までに4日ほどかかります。大変ですが、それでも作り方は変えない。365日、頭の中でチョコレートの試作を繰り返しながら、いくつものアイデアを形にしていきました。
 「生チョコレート」もそのひとつです。ガナッシュクリームを活かして、もっとなめらかなくちどけのチョコレートを作れないかと試行錯誤し、今までにない全く新しいチョコレートができた時は興奮しましたね。その後、あっという間に「生チョコ」という商品名が全国へと広がり、多くの人に教えを請われるようになりました。今では弟子も大勢いますが、皆がそれぞれに新たな挑戦をしてもらえれば、こんなに嬉しいことはありません。そういえば店舗が手狭になって移転した際、生チョコに「公園通りの石畳」と名前を付けて売り出したんですよ。そうしたらいろんなお店で「〇〇通りの石畳」が売られるようになって。それはそれで、楽しいことでしたね。
 飯山には、4年前に戻ってきました。自分の幼名である文蔵を店名とし、「奥信濃BUNZO」として昨年12月に新店舗をオープン。古民家の梁や柱をふんだんに使って建てた店舗は、千曲川に面した美しい場所に在ります。この夏は、生チョコミルクを使ったソフトクリームもカフェで提供を始め好評です。県外をはじめ、近隣の方にも飯山を楽しみながら訪れていただければ嬉しいですね。私もさらに新たな夢を掲げ、チョコレートを通して飯山の皆さんと地域を元気にしていきたいと思います。

(2024年9月号掲載)