ハイジで学んだ後は茅ヶ崎に戻り、「フランス菓子サフラン」を経て、32歳の時に平塚で独立。1982(昭和57)年2月6日に、初めての自分の店、「スイス菓子シルスマリア」を立ち上げました。当時、焼き菓子やケーキの隣に、さまざまな種類のトリュフチョコレートが並んでいるお店は珍しかったと思います。私の作るトリュフは、ベルギーのクーベルチュールチョコレートを使い、完成までに4日ほどかかります。大変ですが、それでも作り方は変えない。365日、頭の中でチョコレートの試作を繰り返しながら、いくつものアイデアを形にしていきました。
「生チョコレート」もそのひとつです。ガナッシュクリームを活かして、もっとなめらかなくちどけのチョコレートを作れないかと試行錯誤し、今までにない全く新しいチョコレートができた時は興奮しましたね。その後、あっという間に「生チョコ」という商品名が全国へと広がり、多くの人に教えを請われるようになりました。今では弟子も大勢いますが、皆がそれぞれに新たな挑戦をしてもらえれば、こんなに嬉しいことはありません。そういえば店舗が手狭になって移転した際、生チョコに「公園通りの石畳」と名前を付けて売り出したんですよ。そうしたらいろんなお店で「〇〇通りの石畳」が売られるようになって。それはそれで、楽しいことでしたね。
飯山には、4年前に戻ってきました。自分の幼名である文蔵を店名とし、「奥信濃BUNZO」として昨年12月に新店舗をオープン。古民家の梁や柱をふんだんに使って建てた店舗は、千曲川に面した美しい場所に在ります。この夏は、生チョコミルクを使ったソフトクリームもカフェで提供を始め好評です。県外をはじめ、近隣の方にも飯山を楽しみながら訪れていただければ嬉しいですね。私もさらに新たな夢を掲げ、チョコレートを通して飯山の皆さんと地域を元気にしていきたいと思います。