未経験で飛び込んだら
とても素敵な仲間に出会えた。

 山形県生まれの私にとって、長野は東京で働いていた頃にスキーやバイクのツーリングでよく訪れていた場所。今思えば長野という地に癒されていたんでしょうか。転職を考えた時に「そうだ、長野に住もう」と、仕事も決めずに移住して、それから今日まで、長野は私にとって大切な場所になっています。
 長野市の東部郊外に位置する「大豆島」という地域に暮らすようになって、もう15年以上になります。「神楽」に出会ったのは、子どもの育成会がきっかけ。収穫したお米を神様に奉納する「権白祭」という大豆島独自のお祭りがあって、獅子と神楽のあとを子どもたちがついて歩きます。その時に神楽囃子がCDで流れていて、もったいないなと感じて。自分も子どもの頃に山形で巫女舞を経験していたので神事には親しみもあり、大豆島神楽保存会に「女でも入れますか」と聞いたところ、「ぜひとも」と受け入れてくれました。神事は女人禁制のものも多いのですが、大豆島神楽保存会は先駆的で、私の前にも女性が入っていて、すぐに溶け込むことができました。
 篠笛はまったく未経験の状態から練習を開始。本来なら「御師匠」に教えを請うのですが、すでに先輩方はご高齢で指導が難しかったため、音源をたよりに、指は試行錯誤しながら覚えていきました。練習を始めて半年くらいで祭りに参加。緊張しましたが、諸先輩方にサポートしていただきながら、楽しく経験を積んでいます。

地域の伝統文化を守るために
自分たちができることを。

 大豆島地区には「大豆島神楽保存会」のほかに、「風間神社太々神楽保存会」「東風間神楽保存会」「松岡神楽保存会」があり、交流を図りながら神楽を未来へつなぐために活動しています。私は大豆島神楽保存会のほかに、風間神社太々神楽保存会にも参加し、できるかぎり神事やイベントに参加するようにしています。
 獅子舞は地区によってさまざまな違いがあり、神楽の曲もそれぞれ違います。大豆島神楽は女獅子で、「道中囃子」から始まり「幌舞い」「御幣舞い」「狂い舞い」と全部で4曲あります。市の選択無形民俗文化財にも指定されている風間神社太々神楽は男獅子で、太刀を持つ舞があるのが特徴です。「道中囃子」で2曲、「勇み」で2曲、「三番叟」「母衣」「太刀」と、全部で7曲あります。覚えるのは大変ですが、やっぱり生の音で舞う獅子は躍動感が違います。まちの人たちからも「生の獅子舞はいいね」とか、「頑張ってね」と声を掛けていただけるので、やりがいもあります。伝統を守ることの大変さ、継続させることの難しさなど課題もたくさんありますが、無理せず、まずは自分自身が楽しみながら、神楽の素晴らしさを伝えていければと思っています。どの地域でも、神社に幟が立ちお囃子が聞こえてきたら、お祭りがある合図なのでぜひ立ち寄ってみてください。
 大豆島地区には、他にも市の無形文化財に登録された「大豆島甚句」という郷土民謡があります。毎年7月末にお祭りが開催されるのですが、ひとつの地区でこれだけ盛大なお祭りをするのは珍しいのではないかと思います。私は「大豆島甚句保存会」にも参加していて、お祭りでは笛を吹いたり踊りを踊ったりしています。とても賑やかで楽しいお祭りですので、ぜひ地区外の方にも遊びにきていただきたいです。
 縁あって大豆島に住み、神楽に興味を持ったことから地域の人の輪に加わり、文化や伝統を守ろうと奮闘する人たちとつながれたことは、私にとって、とても大きな宝物となりました。これからも自分ができることを、仲間とともに楽しく続けていきたいと思います。

(2025年6月号掲載)