長野市伊勢宮に本店を構える「旬彩菓たむら」は、季節の旬、そして人生の折々に訪れる旬を彩るお菓子を作り続けています。大切にしているのは、ともに歩む地元の恵みを活かすこと。長野は美味しい果実や蜂蜜、卵や牛乳、小麦粉やそば粉など、素晴らしい食材の宝庫です。そんな恵みをお菓子に込めて、お客様に笑顔をお届けすることが、旬彩菓たむらの願いです。
今回は、8つの温泉が連なる高山村でブルーベリーの栽培に勤しむ、瑠璃屋の牧野稔さんにお話を伺いました。
さまざまな経験を経て
自然とともに生きると決めて。

横浜市で生まれ、長野とは縁もゆかりもない海の近くで育ちました。多摩美術大学デザイン科グラフィック専攻を卒業後は、造形の仕事をしながら立体イラストレーションやオブジェなどを制作。ギャラリーで個展を開くなど、アーティストとしても活動していました。その後、ガーデンデザイナーとして造園に関わる中で、もっと自然の中で暮らしたい、農業に関わってみたいという夢が膨らみ、そこから移住を真剣に考えるようになったんです。
全国のいろいろな場所を検討する中で長野とご縁をいただき、10年ほど前に移住。最初は小布施の農業法人で1年ほど農業を学び、農産物加工等の6次化にも携わりました。でもやっぱり自分の力で農業をやってみたいという思いが強くて。自然農法を学んでいる時に、高山村に新規就農支援の住宅ができるということで、思い切って家族とともに高山村へ引っ越し、本格的に農業に取り組むことを決めました。
現在は、米を9反歩(約90a)、ブルーベリーは5反歩(約50a)ほど栽培しています。いずれも農薬や化学肥料、除草剤を使わない自然農法で、人にも生き物にも環境にも優しい持続可能な農業を目指しています。
人も生き物も豊かに暮らせる
持続可能な農業を。

ブルーベリーは村内8か所の畑で栽培しています。高山村の気候にあったハイブッシュ系を早生種から晩生種まで10品種以上揃え、剪定や風通しなど木の特性を見ながら、より大きな実をつけるよう工夫しています。基本的に水やりなどはせず、あえて草を刈りすぎないことで朝露が草にたまる、土が乾燥しない循環を作っています。畑には虫やカエルなど、生き物もいっぱいいますよ。丁寧に手を掛けることで、安心・安全で美味しいブルーベリーを皆さんへお届けできればと思っています。ブルーベリーの畑は、地主さんが高齢で後継者がいない場所を引き継ぎました。高山村もやはり高齢化、過疎化が進んでいて、耕作放棄地も増えています。微力ですが、自分の思い描く農業を追求することで、高山村の美しい自然や里山を守ることができればと思います。
たむらさんとの出会いは、もう5年ほど前になりますね。山田温泉にある藤井荘の女将さんから、「たむらさんが美味しいブルーベリーを探していたので紹介しておいたから」と言われて。実際にお会いしたところ、地産地消の考え方やお菓子作りへの熱意を強く感じ、感銘を受けました。丹精込めて大切に育てたブルーベリーが、たむらさんのお菓子に使われていることを、とても嬉しく思っています。
中でも、生のブルーベリーをそのまま使った大福「あざやか」にはびっくりしました。このために作った特製のミルク餡とブルーベリーの相性は最高です。ブルーベリーを和菓子にする発想と、素材本来の味を美味しく食べていただきたいという職人の思いが込められているような気がして、本当に美味しいんですよ。ブルーベリーの旬の時期にしか作れない和菓子ですから、ぜひ多くの方に味わっていただきたいですね。これからも、たむらさんから「これはうまい」と言っていただけるよう、安心・安全で美味しいブルーベリーをお届けしていきたいと思います。