コヤマの技術で
地域内循環の仕組みを構築し
持続可能な社会の実現に
貢献していく。
2015年の国連サミットで「SDGs」が採択され、2030年までに達成すべき世界共通の目標が示されてから、今年で10年。私たちは、持続可能な社会へと舵を切れているのでしょうか。
このシリーズでは、さまざまな課題解決のために、長野の企業や団体がどんな取り組みを始めているのかをご紹介します。今回は、株式会社コヤマ、製造部材料技術課の小出千恵係長にお話を伺いました。
挑戦する社風が
課題解決の第一歩に。
昭和21(1946)年に設立した株式会社コヤマは、来年80周年を迎えます。戦後の、まだ物資も無い時代からアルミや鉄の鋳造を手掛けてきたコヤマの歴史は、常に「挑戦」とともに在りました。現在、他社には真似できない高い技術力を誇るのも、失敗を繰り返しながら挑戦を止めなかったコヤマイズムが受け継がれてきたからだと思います。
新しい燃料である「バイオブリケット」の開発も、まさに挑戦から始まりました。本来、金属を溶かすための「キュポラ炉」は、炉内の温度を1、800℃まで上げるため、熱量の高いコークスを使用しています。しかしコークスは大部分を海外からの輸入に頼っており、安定供給が大きな課題となっていました。そこでコークスの代替燃料として、安定的に調達できる燃料の開発に着手。平成22(2010)年から製品化に至るまで約8年、さまざまな素材を研究し、失敗を繰り返しながら挑戦を続けました。
その過程で見えてきたのが、「バイオマス」です。きのこを栽培した後に残る「廃培地」や、木材加工の際に発生する「バーク(樹皮)」は、長野ならではの素材であり、地域の課題でもありました。これまで不要なものとされてきた「産業廃棄物」を、価値ある「資源」としてコヤマが購入。コヤマの技術力で固形化に成功し、新しい燃料「バイオブリケット」が誕生したのです。
地域内循環を構築し
地域とともに発展していく。
平成30(2018)年、それまで100%コークスだった「キュポラ炉」で「バイオブリケット」の使用が開始されました。当初は月に15tほどでしたが、現在では月に40tの生産が可能となり、「キュポラ炉」でのコークス使用量を20%削減。これにより、CO2の排出量を減らすことができました。令和3(2021)年には、長野市が推進する「バイオマス産業都市構想」にも参画し、さらなる研究、開発に取り組んでいます。
今後は、「キュポラ炉」の完全カーボンニュートラルを実現するため、「バイオブリケット」の炭化に挑戦し、自社製造の燃料のみでの自走化を目指していきたいと思っています。炭化させた「バイオブリケット」は「バイオ成型炭」と呼ばれ、すでに先例もあるので実現可能であることは分かっています。ただ、現在の「バイオ成型炭」は、海外から輸入されたパーム椰子殻で生産されているのが現状です。コヤマが目指すのは、地元である長野で課題となっている地域資源を活用し、地域内循環を高めることで、地域とともに発展していく未来です。長野という地にコヤマが存在する意義は、ここにあると考えています。そのためにも、多くの企業や団体、行政とのつながりを強め、「三方良し」の仕組みを構築、実現させたいと思っています。
このほか、コヤマの鋳造技術を結集した「薪ストーブ」の一般販売に合わせ、「バイオブリケット」も一般の方に提供できるようサイズを調整した「家庭用バイオブリケット」を展開予定です。さらに農業用として、果樹の霜害に活用できる「バイオブリケット」の開発にも着手し始めました。これからも「挑戦」を止めず、コヤマらしい自由な発想で、地域の皆さまと協力しながら持続可能な社会の実現を目指していきたいと思います。