
諏訪大社のお膝元である諏訪市の生まれ。母や叔母が看護師だったこともあり、身近だった医療の道へ進むことを決めました。歯学部を卒業後は、大学病院附属の特殊研究機関で最先端の歯科医療を学ぶことに。とにかくハードな毎日でしたが、今の自分を支える知識や技術、診療に対する考え方は、この頃に身に付いたように思います。
慌ただしい日々の中、ある時訪問歯科診療を経験する機会があって。一人ひとりとじっくり向き合いながら診ることができる訪問診療の在り方に、強く共感しました。自分の進む歯科医療の在り方はこれだと思い、平成24(2012)年に訪問専門の歯科医師として開業。以来、安曇野市を中心に、14年にわたり約7万回を超える訪問診療を行っています。
訪問歯科診療はお年寄りが多いのですが、治療し、口腔ケアを継続していくことで、利用者さんがどんどん変わっていく姿に驚くことがあります。流動食しか食べられず寝たきりだった方が、入れ歯を調整して痛みをとり、同時に口腔内を清潔に保つよう指導したところ、食事をしっかり取れるようになり、目の輝きを取り戻しました。口腔ケアをしたことで、人としての喜びや尊厳まで、取り戻すことができたのです。
口は、6種類の神経が脳とつながっています。自分の歯で咀嚼すること。舌で美味しいと感じること。それらすべてが脳への刺激となり、脳が活性化されます。自分の歯を守ることが、何十年後の自分に大きく影響するということを、もっと多くの方に知っていただきたいと思っています。