
北信濃の山々に積もった雪が、春の訪れとともに解け始める4月中旬。まだ日中でも寒さが厳しい中で行われるのが、源泉から渋の温泉街へ湯を引くパイプ、「引湯管」の掃除です。
渋温泉には約50もの源泉がありますが、中でも最大湯量を誇るのが、温泉街から3㎞ほど離れた横湯川の上流に位置する、地獄谷荒井河原の源泉です。「地獄谷荒井河原比良の湯」と呼ばれるこの場所には、地下7mに源泉が集まるトンネルがあり、中に17カ所、外に4カ所の源泉が自噴しています。
源泉の温度はそれぞれ違っていますが、「源区」内から引湯管に流れてくる温度は、約70℃。
温泉成分が非常に濃いため、放置しておくと成分が泥状の沈殿物となって引湯管の内壁に張りついてしまい、湯の流れが悪くなったり、場合によっては沈澱物でパイプが詰まって湯が流れなくなることもあります。それを防ぐため、毎年春と秋の2回、約1週間かけて皆で力を合わせ、引湯管掃除を行っています。
引湯管は、山沿いに設置されていて、平成3(1991)年に今の引湯管に変えるまでは、しっかりとした足場もなく、非常に危険な状態で掃除が行われていました。現在は、24区画ほどに区切られたパイプ内を「ドレンクリーナー」という専用の機械を使って掃除をしています。ワイヤーの先端に矢尻のような形のハネをつけてパイプの中に送り込むと、ハネがパイプ内で暴れて沈澱物を掻き落とします。これを1区間2往復させ、管の中をきれいにしていくのです。とにかく大変な作業ですが、大地からの恵みをいただくわけですから、皆、感謝して行っています。