長野市伊勢宮に本店を構え
る「旬彩菓たむら」は、季節の
旬、そして人生の折々に訪れる旬を彩るお菓子を作り続けています。大切にしているのは、ともに歩む地元の恵みを活かすこと。長野は美味しい果実や蜂蜜、卵や牛乳、小麦粉やそば粉など、素晴らしい食材の宝庫です。そんな恵みをお菓子に込めて、お客様に笑顔をお届けすることが、旬彩菓たむらの願いです。
今回は、須坂市で大正時代から農家として歴史を紡いできた岡木農園の4代目、岡木宏之さんにお話を伺いました。
自らの手で生み出す
「農業」という仕事に誇りを。

大正時代から続く岡木農園の4代目として生まれました。子どもの頃は農家の仕事が嫌でしかたがなくて、大学を卒業した後は農業とはまったく関係のない金融の仕事に就いたこともあります。ただ、社会を知ったことで、父が自然を相手に「実り」を生み出す姿や、実直に仕事に取り組む姿勢に共感を覚えて。新たな視点で農業を見ることができるようになり、自分の手でどこまでできるか挑戦してみたいと、思い切って農家を継ぐことを決めました。
会社を辞めて農業を継いだのは、2019年の4月のことです。もう6年ほどになりますね。その間にかなり圃場を広げ、現在は須坂市内の4カ所、約2haの畑でぶどうを栽培しています。メインで栽培しているぶどうは、シャインマスカットですが、それ以外にもナガノパープルやクイーンルージュ、クインニーナ、バイオレットキング、巨峰に雄宝、そしてピオーネと、8品目ほどのぶどうを栽培しています。ぶどうは大きく分けると、黒系、赤系、白系があるのですが、それぞれ品種ごとに気を付けるべき点が違ったりと、栽培には気を使います。
私自身はまだまだ父の背中を追う身ですが、美味しいと言っていただけるぶどうをお客様にお届けするために、一つひとつの作業を丁寧に、手間をかけることを心掛けています。
自分たちのこだわりを
大切に守り続けていきたい。

ぶどう栽培の工程の中でも、摘粒はぶどうの房の形を決める大切な工程です。成長した姿を想像しながら、的確な場所にハサミを入れて粒の数と形を整えていく作業は、本当に神経を使います。一番忙しい時期は、総勢15名くらいのスタッフで作業を進めていますね。今年は約6万房に袋掛けをしました。暑い中での作業なので、気が遠くなるような数ですが、秋の実りを祈りながら丁寧に手作業で掛けています。
岡木農園では、収穫時にもこだわりがあります。しっかりと味をのせてから美味しいものだけを出荷するために、他に流されずに自分たちが「今だ」と思う瞬間まで木で熟させ、良いものだけを収穫しています。これからも良い意味で「こだわり」を持ち続け、お客様からの信頼を裏切ることのないよう努めていきたいと思います。今、ぶどうの品種や栽培方法は、日々進化しています。自分なりの経験とこだわり、そして新たな手法をうまく組み合わせて、柔軟に、より良いぶどうを育てていきたいと思います。
旬彩菓たむらさんとの出会いは、もう4年以上前になります。うちのシャインマスカットを気に入ってくださり、お菓子を作りたいとご連絡をいただきました。出来上がった「水まんじゅう」を食べた時はびっくりしましたね。素材を活かしながらシャインマスカットの新しい味わい方を提案していて、私たちが育てたぶどうの一粒一粒を大切に扱っていただけているのが本当に嬉しかったです。たむらさんのお菓子を通して、岡木農園のぶどうを多くの人に味わっていただける幸せを感じています。
今後は、美味しいぶどうをさらに上手に栽培できるようになることはもちろん、新しい品種作りにも挑戦してみたいと思っています。夢はどんどん広がっています。