長野市伊勢宮に本店を構え
る「旬彩菓たむら」は、季節の
旬、そして人生の折々に訪れる旬を彩るお菓子を作り続けています。大切にしているのは、ともに歩む地元の恵みを活かすこと。長野は美味しい果実やハチミツ、卵や牛乳、小麦粉やそば粉など、素晴らしい食材の宝庫です。そんな恵みをお菓子に込めて、お客様に笑顔をお届けすることが、旬彩菓たむらの願いです。
今回は、東北信エリアを中心に養蜂を営む松代養蜂株式会社の社長、依田清二さんにお話を伺いました。
自然と共存・共栄する
養蜂の世界。

義父が手掛けていた養蜂を受け継いで約50年。現在は、長野市内や坂城町、上田市など、東北信エリアに点在する約10カ所で養蜂を営んでいます。
早春、長野市内はまだ寒さが厳しい頃に、トラックに巣箱を積んで長野県の南部や山梨県へ向かい、それぞれの群の女王蜂に春が来たことを知らせて、蜂の量を増やすところから養蜂は始まります。働き蜂がたくさん生まれるということは、それだけハチミツを集める量が増えることにつながるので、ここで蜂群を大きくすることは養蜂にとって重要なポイントです。りんごの花が咲く頃までに群を育てて長野市内に戻り、受粉もかねて各農家へ巣箱を設置。りんごは品種改良によって花の期間が短くなり、昔ほど蜜が集められなくなっていますが、希少なハチミツを採蜜します。
その後に咲き始めるのが、アカシアです。河川敷や山中に白い房状の花が咲いているのを見たことがある方も多いかと思います。ミツバチの行動範囲は約2㎞と言われていますので、その特性を活かし、広いエリアからアカシアの蜜を集めます。蜂たちは、だいたい1週間から10日くらいで蜜を集めるので、巣箱の様子を確認しながら採蜜の時期を決めていきます。アカシアも開花の時期が早まっていて、昔は5月下旬頃の開花だったのが、今は上旬頃には咲き始めています。養蜂は自然の営みの中で行われるので、温暖化の影響を強く感じています。
ミツバチに感謝して
自然の恵みを届けていきたい。

巣枠にたっぷりと蜜が溜まったら、巣箱から取り出して蜜ろうを取り除き、分離機に掛けて採蜜していきます。同じアカシア蜜でも、採れる場所や時期によって味が違うんですよ。また、アカシアの花の時期に雨が多いと量が減りますし、天候が良いと蜂たちも頑張ってくれます。まさに生き物相手、自然相手が養蜂なんです。
松代養蜂では、各エリアから採蜜したアカシア蜜を合わせることで、毎年安定した味になるよう心掛けています。現地での採蜜時に一度ろ過したものを、ブレンド時にもう一度ろ過し、丁寧に処理したハチミツを瓶詰めしていきます。厳密にいえば色味や風味は年によって違いますが、その違いを味わうのもまた、ハチミツの楽しみ方の一つだと思います。さっぱりとした上品な甘さが特徴のアカシア蜜は、ハチミツ初心者でも食べやすいので、ぜひ一度試してみてほしいですね。
ハチミツの生産量は、北海道、熊本県に続き、長野県が第3位となっています(令和5年統計データ)。最近は若い養蜂家さんたちも増え、個性豊かなハチミツが店頭に並ぶようになりました。とはいえ、日本のハチミツの自給率は約6%。そのほとんどが中国をはじめとする海外からの輸入となっています。日本の里山の恵みをもっと多くの人に知っていただき、安心・安全な美味しさを味わっていただきたいと思います。
旬彩菓たむらさんとは、もう長いお付き合いです。長野のミツバチたちが長野の花から集めたハチミツを、長野のお菓子として多くの人たちに楽しんでいただけることを、とても嬉しく思っています。これからも実直に、自然とミツバチに感謝しながら、美味しいハチミツをお届けしていきたいと思います。