
夢を叶える一歩として、玉村豊男さんを中心に作られた「千曲川ワインアカデミー」を受講したのが2016年のことです。同時に高山村の角藤農園に弟子入りし、栽培のノウハウを体に叩き込みました。みっちり2年間修業をした後に信更町に畑を借り、ワインぶどうの栽培を開始。自分自身で苗を植え、育てたぶどうを収穫できたのが2020年です。中野市にある「たかやしろファーム」に依頼して醸した初のワイン、「シグネチャーK」ができたときは、嬉しさよりも「自分のワインができた」という安心感の方が大きかったですね。ワインそのものは、精一杯取り組んだことに合格点は出せても、ソムリエとしての視点からみるとまだまだ改善点があるなと。自分の中に生産者とソムリエの二つの視点があることが自分の強みだと思うので、これからも客観的な視点を意識しながらワインを醸していきたいと思います。
その後、多くの方との出会い、尽力を得て、有旅の地に「有旅ワイナリー」を開設することができました。2023年から苗を植え始め、現在はピノ・ノワールとシャルドネの2種を栽培しています。昨年の秋に醸したワインが完成し、6月に白ワインを、9月から赤ワインを販売しています。ワインを仕込む際に意識しているのは、栽培は丁寧に、選果はさらに丁寧に、その後は人の手は入れず、ぶどうのあるがままワインになっていく過程を見守る姿勢です。非常にクラシカルなワイン造りといってもいいかもしれません。ぶどうが持つ本来の良さ、個性を活かすワイン造りを追求していきたいと思っています。
自ら応援に駆けつけてくれる地域の方々の力も借りて、今年も非常に良いぶどうが実りました。この地から世界に通用するワインを発信することで、有旅を訪れ、有旅の食とワインを楽しむ人が笑顔になる日を夢みて、ワインを醸し続けていきたいと思います。