• 山ノ内町で
    本当に美味しいりんごを
    じっくりと
    育てていきたい。

      • 信州 志賀高原
        おおもり農園 園主

        大森 祐助

        Yusuke Omori

      • 信州 志賀高原 おおもり農園
      • 0507.yusuke@gmail.com

会社員から一念発起し
導かれるように山ノ内町へ。

 栃木県宇都宮市生まれ。小さい頃から外で遊ぶことが大好きで、家族でキャンプに行ったりとアウトドアを楽しんでいました。母の実家が米農家だったこともあって、小さい頃から田植えや稲刈りの時期にはよく田んぼに行っていましたね。自然や農業が身近な環境でのびのびと育ちました。
 社会人となり名古屋で働いていたのですが、仕事を通して「自分の力で事業をやってみたい」という気持ちが強くなっていって。じゃあ何をやるか、と考えた時に「農業」が浮かんだんです。今思えば子どもの頃から農業に親しんでいたことや、自然豊かな田舎で暮らしたいという願望もあったかと思います。そこからいろいろと調べ始め、山ノ内町で農業PRを活動内容とした「地域おこし協力隊」の募集を見つけて。長野県には趣味の登山で何度も訪れていましたが、山ノ内町のことは全く知らなかったので、まず一度行ってみようと足を運び、山々が連なる自然豊かな風景や果樹の畑を眺めながら「ここに住みたい」と思えたので、その場でポストに履歴書を投函しました。
 ご縁をいただいて地域おこし協力隊に就任したのが、平成29(2017)年のことです。当時はまだ地域おこし協力隊の活動も手探りの状態でしたが、果樹を中心とした農産物のPR事業に取り組むと同時に、農家さんたちの集まりには必ず顔を出して名前を売り、多くの農家さんへ手伝いに行くことで栽培技術を実地で覚えていきました。

じっくり腰を据えて
美味しいりんごを届けたい。

 地域おこし協力隊の任期を終えて果樹農家として就農したのが、令和2(2020)年の春です。りんごを栽培していた畑をそのまま樹ごとお借りしたので、初年度から収穫の目途が立ったのはよかったのですが、とはいえ自分一人ですべての作業をするのは初めてだったので、おもしろくもあり難しくもありました。最初から7反歩(約700
0㎡)の広さの畑を借りてしまったので、とにかく毎日が大変でしたね。りんごの栽培は、冬の剪定から始まり、摘花や摘果、消毒や草刈り、葉摘みや玉まわしなど、収穫までにさまざまな工程が続くので、秋にりんごを収穫した時も、嬉しいというよりもほっとした安堵の気持ちの方が大きかったかもしれません。
 あれから今年で6年目。今でも畑で作業をしていると、知り合いの農家さんがよく声を掛けてくれます。周りの農家さんは自分の親世代の方が多いので、期待と心配が半々といったところでしょうか。先輩たちに早く一人前だと思ってもらえるよう、日々精進していきたいと思っています。
 現在はりんごを1町2反歩(約12000㎡)ほど、ぶどうを2反歩(約2000㎡)ほど栽培しています。一人でやっているので作業は大変ですが、すべてを自分で決められるのでストレスはありません。畑で作業中に声を掛けてくれた旅行中の方が、それから毎年うちのりんごを目当てに訪れてりんごを買ってくれるなど、嬉しい販路も広がっています。自分が丹精込めて育てたりんごを美味しいと言ってもらえると本当に嬉しいですし、ありがたいと思います。果樹栽培は自然相手なので思い通りにいかないことも多々ありますが、雄大な自然に恵まれた山ノ内町にしっかりと根を下ろし、自分自身が納得できる美味しいりんごをこれからも育てていきたいと思います。

(2025年12月号掲載)