旬彩菓たむら-戸隠一山
 長野市伊勢宮に本店を構える「旬彩菓たむら」は、季節の旬、そして人生の折々に訪れる旬を彩るお菓子を作り続けています。そんな「たむら」が、地産地消を志し、地域の素材を求める中で出会ったのが、戸隠の地。良質なそば粉を通して見えてきた戸隠の魅力を、美しい四季とともにお伝えしたいと思います。
 今回は、戸隠地質化石博物館の研究員である田辺智隆さんに、戸隠の成り立ちについてお話を伺いました。
海から山へと変貌を遂げた
戸隠連峰の美しさ。
 戸隠という地を語る時、その歴史の源には、大地の動きが大きな影響を及ぼしています。日本列島がユーラシア大陸から分かれて形成されたということを知る方は多いと思いますが、私たちが暮らす長野市は、東北日本と西南日本の境目となるフォッサマグナと呼ばれる地帯で、約2000万年前は海でした。その後、海底火山の噴火や東からの日本列島の圧縮など、大地の変動によって戸隠周辺の隆起が進み、2000m級の山々が連なる戸隠連峰となったのです。だから戸隠山からは、ホタテ貝などの貝類やサメの歯、クジラなどの哺乳類の化石が発見されています。こんなに高い山々が海の底にあったかと思うと、大地の息吹を感じ感動を覚えます。
 このような経緯で形成された戸隠山は、海底火山の噴火による凝灰角礫岩という硬い岩石でできており、浸食に耐えた地層がむき出しになった、断崖絶壁が続く唯一無二の迫力ある山になりました。古の人々は、その独特な形や壮大な美しさに岩戸を思い描き、そこから天の岩戸伝説が戸隠に生まれたのではないかと思います。
 ちなみに、長野市が比較的雪が少なく暮らしやすいのは、戸隠連峰のおかげですよ。日本海からくる雪雲は戸隠山を越えることができずに、標高の低い飯山市や信濃町、小谷村方面に流れるんです。私たちは、もっと戸隠山に感謝しないといけないですね。
豊かな水の恵みが
山岳信仰へとつながって。
 戸隠はまた、水が豊かな地でもあります。これは、戸隠山などを形成する硬い地層の上に、飯縄山が噴火したことによる地層が重なり、水を蓄えやすい地質となったため。美しい風景で人気スポットとなっている「鏡池」や「小鳥ヶ池」も、実は人工のため池です。この豊かな水の恵みは、人々の命を支え、農業を支えてきました。大地を潤し、時に氾濫する川の様子は、まさしく龍のごとし。きっと恐れ、敬われていたことでしょう。水の恵みをいただける山として九頭龍様という地主神が生まれ、戸隠山を「御神体」として祀るようになるのは、自然のことだったと思います。
 また、大正4(1915)年には、その豊富な水量と水質の良さから、戸隠を水源とした長野市初の上水道が計画され、往生地に浄水場が作られて、長野市街地の人々の暮らしを支えました。この完成を記念してできたのが、善光寺の横にある城山公園の噴水です。大正5(1916)年に一般公開された噴水は、当時としては東洋一といわれ、最大で20mに達したといわれています。この噴水も、戸隠の水の恩恵だったんですね。
 その後、昭和39(1964)年にバードラインが整備されると、長野市街地から戸隠まで40分ほどで行けるようになり、多くの観光客が戸隠を訪れるようになりました。それから約60年。近年では海外の方も含め、さらに多くの方たちが戸隠を訪れています。戸隠の魅力を一言で表すのは難しいですが、戸隠山を仰ぎ敬い、地の物である蕎麦を打ち、手作りの竹ざるにのせてふるまう。そういった自然と人との距離感が昔とあまり変わっていないということも、大きな魅力のひとつかと思います。どっしりと構える戸隠山と豊かな水の美しさ、四季折々にさまざまな表情を見せる戸隠の地は、大地の恵みそのものです。
戸隠のそば粉を活かした
たむらの代表菓子

蕎麦朧

  • 旬彩菓たむらを代表する菓子である「蕎麦朧」は、戸隠産の最上級そば粉、長野県産の上質な小麦粉、和三盆、カルピスバター等を用いた、たむらオリジナルの和菓子です。生地を仕込んで焼き上げるまで、一つひとつの工程を手作業で丁寧に仕上げるからこそ、ほろほろとした独特な食感と風味豊かな蕎麦の香りを感じていただけます。
蕎麦朧を味わう
  • 口に入れると、ホロッとほどけていく感じがいいですね。ほんのりとした甘みと香ばしさがあって、とても美味しいです。指でつまめるサイズ感もちょうどいい。日本茶はもちろん、どんなお茶のお供にも合うお菓子だと思います。
  • 本店
  • 住所/長野市伊勢宮1-18-14
  • TEL/026-228-9235
  • 営業時間/9:00~18:00
  • 定休日/月曜日
  • 駐車場/8台
  • ながの東急店
  • 住所/長野市南千歳1-1-1ながの東急百貨店 地下1F
  • TEL/026-226-8181(ながの東急代表)
  • 営業時間/10:00~19:00
  • 定休日/ながの東急百貨店に準ずる
  • 駐車場/ながの東急百貨店駐車場をご利用ください。
  • http://www.shunsaikatamura.com/
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(2026年1月号掲載)