旬彩菓たむら-戸隠一山
 長野市伊勢宮に本店を構える「旬彩菓たむら」は、季節の旬、そして人生の折々に訪れる旬を彩るお菓子を作り続けています。そんな「たむら」が、地産地消を志し、地域の素材を求める中で出会ったのが、戸隠の地。良質なそば粉を通して見えてきた戸隠の魅力を、美しい四季とともにお伝えしたいと思います。
 今回は、戸隠観光協会協会長の山口輝文さんに、戸隠そばの歴史についてお話を伺いました。
平安の時代から
連綿と続くそばの文化。
 戸隠とそばの歴史は、平安時代までさかのぼります。修験道の霊場として戸隠山を訪れた修験者たちは、五穀(米・麦・粟・稗・豆)断ちをしており、携帯を許されたのはそばの実だけでした。そばは唯一、生で食べることができる穀物で、修験者たちはそばの実をつぶし、水で溶いたものを食べていたとされています。そばは栄養バランスも良く吸収が早いので、修行には必須の食べ物でした。戸隠に多くの修験者が訪れるようになると需要も高まり、栽培が盛んになっていったと思われます。
 やがて奥院が開かれ、宝光院、中院と続き、鎌倉時代の初期には、天台宗比叡山延暦寺の末寺、顕光寺に。江戸時代になると徳川家康より寺領千石を与えられ、幕府の庇護のもと顕光寺は栄えていきました。
 宝永6(1709)年に記された「奥院燈明役勤方覚帳」に、「蕎麦切」の記述を確認することができます。推測するに、当初は寺の供物として、そばを麺状にする蕎麦切りの技術が江戸から伝わり、それがやがてハレの日の食事として、戸隠を訪れる参拝者をもてなす逸品となっていったのではないでしょうか。この「覚帳」は、そば博物館とんくるりんで実物を見ることができます。
 その後、昭和39(1964)年にバードラインが開通し、多くの人が戸隠を訪れるようになるとそば屋が軒を連ねるようになり、戸隠そばの美味しさは全国に広まっていきました。今では、岩手のわんこそば、島根の出雲そばと並び、戸隠そばは日本三大そばとして親しまれています。
冷涼な気候が育んだ
戸隠のそば。
 戸隠は、飯縄山の噴火による水はけの良い火山灰土と、戸隠山系の清らかな水、昼夜の寒暖差による朝霧など、良質なそばを育てる環境が揃っています。そんな地の利を活かし、戸隠では「夏そば」と「秋そば」の2期作でそばを栽培。昔は「夏のそばは不味い」などと言われていましたが、今は品種改良も進み、保管技術や製粉技術の進化によって一年中美味しいそばを食べることができます。農家さんの努力で、一昨年の収穫量は約130t。現在、戸隠には30軒ほどのそば屋がありますが、すべてのそば屋で戸隠産のそば粉が使えるまでになりました。また、戸隠に古くから残る在来品種を守ることも、私たちの使命だと思っています。在来品種は粒が小さく収穫量も少ないのですが、香りが良く、毎年11月に開催される「新そば献納祭」で献納するそばは在来品種です。お祓いしたそばは数量限定の献納そばとして提供されますので、ぜひ一度味わってみてください。
 戸隠そばは、職人が「一本棒丸延し」で手打ちし、戸隠山系の冷たく清らかな水できゅっとしめて、竹細工の皿に「ぼっち盛り」で盛り付け提供します。「ぼっち盛り」の由来は諸説ありますが、昔は参拝者が宿坊に宿泊した際に、複数人分のそばを大きな竹ざるに盛って提供していたことから、取り分けやすいように小分けにしたのではないかと思っています。そばの名店が多い戸隠ですが、同じ地粉でも打ち方、茹で方で風味は変わります。店を巡って自分好みのそば屋を探すのも楽しいものですよ。また、そば博物館とんくるりんでは、そば打ちも体験できます。自分で打ったそばの味は、また格別。冬期は観光情報センターで体験を行っていますので、ぜひ、自分だけのそばを打ちにきてください。
戸隠のそば粉を活かした
たむらの代表菓子

蕎麦朧

  • 旬彩菓たむらを代表する菓子である「蕎麦朧」は、戸隠産の最上級そば粉、長野県産の上質な小麦粉、和三盆、カルピスバター等を用いた、たむらオリジナルの和菓子です。生地を仕込んで焼き上げるまで、一つひとつの工程を手作業で丁寧に仕上げるからこそ、ほろほろとした独特な食感と風味豊かな蕎麦の香りを感じていただけます。
蕎麦朧を味わう
  • そばの香りがしっかりと残っていて美味しいですね。口の中でとけるような、上品な味わいを楽しめます。戸隠では、よく店でそば茶が出されますが、「蕎麦朧」の香りを楽しむなら、別のお茶と合わせたほうが本来の美味しさを楽しめそうです。
  • 本店
  • 住所/長野市伊勢宮1-18-14
  • TEL/026-228-9235
  • 営業時間/9:00~18:00
  • 定休日/月曜日
  • 駐車場/8台
  • ながの東急店
  • 住所/長野市南千歳1-1-1ながの東急百貨店 地下1F
  • TEL/026-226-8181(ながの東急代表)
  • 営業時間/10:00~19:00
  • 定休日/ながの東急百貨店に準ずる
  • 駐車場/ながの東急百貨店駐車場をご利用ください。
  • http://www.shunsaikatamura.com/
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(2026年2月号掲載)