• 歴史ある須賀川の竹細工を
    後世につなげていくために
    自分たちができることを
    考えていきたい。

      • 須賀川竹細工振興会

        山口 賢治

        Kenji Yamaguchi

      • (一財)山ノ内まちづくり観光局
      • 0269-38-9191

リタイアしてから始めた
竹細工の奥深さに魅かれて。

 生まれも育ちも山ノ内町。自然豊かな故郷でのびのびと育ちました。春夏秋冬、移り行く季節の中でさまざまな表情を見せる風景や、豊かな大地の恵み、暮らす人も優しく、山ノ内町は本当に素晴らしいところだと思っています。
 早期退職でリタイアした後に何か新しいことを始めたいと思い立ち、教室の門を叩いたのが「須賀川竹細工」との出会いでした。須賀川の竹細工は子どもの頃から身近で家でも使っていたので、「竹細工ならお金もそんなにかからないだろうし、実用的だから良い趣味になるんじゃないか」と、本当に軽い気持ちで始めたんです。先生は常に6、7人ほどいて、皆さん熟練の職人さんばかり。当時は教室とは言っても教科書もなにもなく、上手な人の隣に座って見様見真似で作りながら教えてもらいました。先生から「竹の声が聞こえるようになれば、苦労せずとも刃を当てれば竹は割れてくれる」と言われてね。最初はなんのことかさっぱりわかりませんでしたが、それでも続けていくうちに自分で竹が割れるようになり、網目が六角形に見える「六ツ目編み」の籠も作れるようになりました。
 そうなると俄然面白くなるしやる気も出るものです。新しい編み方を学ぶために自ら先生に教えを乞いに行くなど、自分でも試行錯誤しながら竹細工を作り続け、気が付けば20年以上経っていました。やればやるほど奥が深い須賀川竹細工の美しさ、奥深さに魅かれて、今も編み続けています。

須賀川竹細工を
後世へ伝えていくために。

 北志賀高原に自生する根曲がり竹を使って作る須賀川の竹細工は、暮らしを支える生活用具として、300年以上前から作り続けられてきました。雪深い北志賀の冬の手仕事として定着していましたが、スキー場をはじめとする志賀高原のリゾート化や急激な時代の変化とともに、竹細工を編む人が減少。このままでは須賀川竹細工の技術、文化が途切れてしまうと一念発起した方が中心となって「須賀川竹細工振興会」を立ち上げ、須賀川の竹細工を継承する活動を始められたそうです。私が竹細工を始めるきっかけとなった「竹細工教室」もその活動のひとつ。コロナ禍で活動を中断したこともありましたが、今では毎年40名近い生徒さんが熱心に通う教室に成長しました。
 私もいつの間にか教えられる側から教える側に回っています。まだまだ自分自身も経験を重ねている最中ですが、竹細工の楽しさを生徒さんに知ってほしいと頑張っています。自分が編む際に気を付けているのは、まず丈夫で壊れず機能的かどうか。そして見た目、形の良さや処理の綺麗さも重視し、しっかりと確認しています。
 振興会のメンバーが制作した竹細工は、毎年開催される「長野県伝統工芸展」に出展、販売されるほか、松本や長野で開催されるクラフトフェアでも販売しています。また、山ノ内町の道の駅「北信州やまのうち」にも置いています。使うごとに味が出て手になじむ竹細工は、丈夫なので竹が飴色になるほど長い年月、愛着を持って使っていただける一品です。ぜひ一度、手に取っていただき、竹細工を暮らしの中に取り入れていただきたいと思います。
 須賀川竹細工は昭和58(1983)年に長野県の伝統的工芸品にも指定されました。連綿と受け継がれてきた技術、伝統を守りながら、今の暮らしのニーズに合う商品を提案していくことも、これからの須賀川竹細工に必要な視点だと思っています。須賀川竹細工の文化を後世に継承するためにも、自分たちができることに真摯に取り組んでいきたいと思います。

(2026年3月号掲載)