• 多品種栽培の
    りんごの産地として
    新たな挑戦を重ね
    地域課題を解決していきたい。

    • 飯綱町
      産業観光課 農政係 主幹係
      町田 陽介さん



 2015年の国連サミットで「SDGs」が採択され、2030年までに達成すべき世界共通の目標が示されてから、今年で11年。私たちは、持続可能な社会へと舵を切れているのでしょうか。
 このシリーズでは、さまざまな課題解決のために、長野の企業や団体、行政がどんな取り組みを始めているのかをご紹介します。今回は、飯綱町産業観光課農政係主幹として日々の業務に取り組む町田陽介さんにお話を伺いました。

飯綱町の風景そのものである
りんご農家とともに。

 飯縄山の麓にひろがる、のどかな町、飯綱町。昼夜の寒暖差の大きな気候は果樹栽培に適しており、中でも美味しいりんごの産地として知られています。飯綱町では町の基幹産業ともいえるりんご農家を支援することで、持続可能な農業の在り方や町の活性化を模索し、さまざまな施策に積極的に取り組んでいます。
 平成2(1990)年に英国王立園芸協会から16品種の英国りんごの苗木が寄贈されたことをきっかけに飯綱町では多品種栽培に力を入れ、現在では50品種以上のりんごを栽培しています。中でも「クッキングアップルの王様」と呼ばれる「ブラムリー」は、強い酸味と爽やかな風味が人気で、飯綱町の新たな特産品として年々収穫量が増加しています。飯綱町では、これからも農家さんが安心してブラムリーを栽培できるよう新たな販路拡大を模索。町内外の飲食店の協力を得て、ブラムリーのメニューが楽しめる「英国りんごフェア」を開催するなど、認知度の向上にも努めてきました。さらに昨年、「地域との共生」をビジョンに掲げる株式会社セブン–イレブン・ジャパンさんのご協力により、ブラムリーを使った「信州飯綱町産ブラムリーのアップルパイ」を商品化。テスト販売が好評だったことから、今年の2月6日より長野県下の約440店舗のセブン–イレブンで販売していただきました(現在は終了)。飯綱町のブラムリーの美味しさを多くの方に知っていただける良い機会になったのではないかと思っています。

新しい発想で
町の未来に貢献していく。

 飯綱町では、令和3(2021)年2月に「飯綱町三本松農産物加工施設」を新設し、各農家が自社農園のりんごを持ち込んで、オリジナルのりんごジュースやジャム、ドライフルーツなどを商品化できるよう支援しています。品質に問題がない規格外品に付加価値をつけることで廃棄されるりんごが減り、各農家の新たな販路拡大や収入増にもつながっています。
 また、りんごをジュースなどに加工する際に出る残渣の活用にも力を入れています。残渣の乾燥、粉末化に成功したことで、りんごの残渣を混ぜ込んだ合成皮革「りんごレザレット」も生まれました。株式会社SORENAさんから多くの商品が販売されています。
 ただ、現在すべての残渣が活用されているわけではありません。この課題に町全体で取り組んでいきたいと、北部高校の生徒さんや岡学園トータルデザインアカデミーの学生さんたちに「りんごの残渣活用」について検討・提案していただく機会を設けています。次世代の若者たちとの交流を通して、直面している課題に対し、産学官が連携して解決の糸口を見つけようとしています。
 さらに、受粉用の小さなりんご「メイポール」の活用にも取り組んでいます。信州大学工学部に依頼し、特許技術である「酵素処理技術」を用いてメイポールの天然色素やポリフェノールをまるごと抽出。付加価値のある抽出液として、多角的な利用を検討しています。この抽出液は色もきれいな赤色で酸味が強く、クラフトビールやカクテル、お菓子や料理など、幅広い活用が期待できます。これまで廃棄されることが多かった受粉用のりんごを、環境に優しいSDGs商品として提案できることを嬉しく思っています。今後も、新たな挑戦を続け、農家支援を通して地域課題を解決することで、環境問題にも貢献していきたいと思います。

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(2026年5月号掲載)