旬彩菓たむら-戸隠一山
 

 長野市伊勢宮に本店を構える「旬彩菓たむら」は、季節の旬、そして人生の折々に訪れる旬を彩るお菓子を作り続けています。そんな「たむら」が、地産地消を志し、地域の素材を求める中で出会ったのが、戸隠の地。良質なそば粉を通して見えてきた戸隠の魅力を、美しい四季とともにお伝えしたいと思います。
 今回は、宝光社にある武井旅館の女将である武井祐子さんに、戸隠五社のうち宝光社についてお話を伺いました。

神仏習合を色濃く残す
荘厳な宝光社。
 戸隠に奥院が開かれてから約200年後の康平元(1058)年、平安時代後期に宝光院は建てられました。言い伝えによると奥院から地蔵権現が飛んできて、「奥院は結界の地で女人が入れず、衆生済度の誓願もままならない。ここに堂を建てて我を安置しなさい」と言ったそうです。それを聞いた人々はすぐに社を造り、地蔵権現を安置して祀りました。地蔵権現が飛んできた場所は「伏拝所」と呼ばれ、奥院に参拝できない女性や老人などが、ここから戸隠山や奥院を望み、伏し拝んだとされています。これはあくまでも伝承で、実際のところは環境が厳しい奥院に対し、居住区として宝光院ができたのではないかと思います。
 荘厳な杉の木の香りに包まれながら270余段の石段を登ると、神仏習合時代の面影を残す美しい社殿が現れます。平安時代は仏と神は本来ひとつであるとされ、地蔵権現が天表春命に姿を変えて現れたと考えられていたことから、御祭神は天表春命となりました。天表春命は、中社の御祭神である天八意思兼命の御子神様で、開拓・学問技芸・裁縫の神、安産の神、女性や子供の守り神とされています。ちなみに神仏分離令によって、宝光院の本尊だった勝軍地蔵は戸隠を離れ、今は善光寺大本願に大切に保存されています。
歴史ある宝光社のお膝元で
宿坊を営んで。
 宝光院の頃は17坊あったとされる宿坊のうち、現在宿坊を営んでいるのは14坊で、互いに協力しながら戸隠を訪れる参拝者をお迎えしています。武井旅館は、明治以前は福寿院として代を重ね、神仏分離令の際に神官となってから5代目となりました。昔は「戸隠一山」という意識が強く、人の出入りも少なくて嫁ぐのも本当に狭い範囲だったんですよ。私も戸隠生まれの戸隠育ちで、坊から坊へと嫁ぎました。今はもう時代が変わったので、戸隠にも新しい風が吹き始めています。女将同士も仲が良く、戸隠を訪れる方に少しでも良い思い出を持ち帰っていただけるよう、薬膳を学んで薬膳茶でおもてなしをするなど、心にも体にも良い時間をご提供できるよう取り組んでいます。
 武井旅館の主屋である茅葺き屋根の建物と薬医門、庭園は「重要伝統的建造物群保存地区」の特定物件に指定されました。特に江戸時代中期の延享2(1745)年に建てられた主屋は、神仏習合の名残が色濃く残っています。昭和20(1945)年8月に宝光社周辺で起きた大火を運よく免れたことで、福寿院の頃に祀っていた秘仏も守られました。現在は、神仏分離令の際に屋根裏にしまわれた釈迦如来様や不動明王様、お地蔵様などを神殿の横に祀らせていただき、平安時代から連綿と続く戸隠の歴史を語る証として、皆さまにご案内しています。参詣された方にお配りしていた札の版木なども飾ってありますので、興味のある方は坊にお泊まりいただき、悠久の歴史に思いを馳せてみてください。
 近年、戸隠の魅力が再認識され、多くの方が戸隠を訪れるようになりました。参拝者をお迎えして感じるのは、「祈りのカタチ」が変わってきたこと。今はさまざまな方がそれぞれの「思い」で五社を参拝しています。時代は変わっても人を惹きつける戸隠の不思議な力に感謝しながら、これからもこの地を守っていきたいと思います。
戸隠のそば粉を活かした
たむらの代表菓子

蕎麦朧

  • 旬彩菓たむらを代表する菓子である「蕎麦朧」は、戸隠産の最上級そば粉、長野県産の上質な小麦粉、和三盆、カルピスバター等を用いた、たむらオリジナルの和菓子です。生地を仕込んで焼き上げるまで、一つひとつの工程を手作業で丁寧に仕上げるからこそ、ほろほろとした独特な食感と風味豊かな蕎麦の香りを感じていただけます。
蕎麦朧を味わう
  • 蕎麦朧は、武井旅館がお客様をお迎えする際の御着き菓子として、客室に置かせていただいています。このほわっとした優しい口当たりとそばの香り、和三盆とバターの上品な風味がいいですね。お客様にもご好評をいただいています。
  • 信州戸隠高原 宝光社
    武井旅館
  • 住所/長野市戸隠2164
  • TEL/026-254-2520
  • https://takeiryokan.jp/
  • 本店
  • 住所/長野市伊勢宮1-18-14
  • TEL/026-228-9235
  • 営業時間/9:00~18:00
  • 定休日/月曜日
  • 駐車場/8台
  • ながの東急店
  • 住所/長野市南千歳1-1-1ながの東急百貨店 地下1F
  • TEL/026-226-8181(ながの東急代表)
  • 営業時間/10:00~19:00
  • 定休日/ながの東急百貨店に準ずる
  • 駐車場/ながの東急百貨店駐車場をご利用ください。
  • http://www.shunsaikatamura.com/
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(2026年4月号掲載)