旬彩菓たむら-戸隠一山
 

 長野市伊勢宮に本店を構える「旬彩菓たむら」は、季節の旬、そして人生の折々に訪れる旬を彩るお菓子を作り続けています。そんな「たむら」が、地産地消を志し、地域の素材を求める中で出会ったのが、戸隠の地。良質なそば粉を通して見えてきた戸隠の魅力を、美しい四季とともにお伝えしたいと思います。
 今回は、戸隠地質化石博物館の研究員である中村千賀さんに、戸隠五社のうち火之御子社についてお話を伺いました。

芸能の神として崇められる
天鈿女命を祀る火之御子社。
 「天岩戸開き神話」ゆかりの神々を祀る戸隠の五社。そのうち、天照大神が籠ってしまった岩戸の前で踊りを踊った天鈿女命を主祭神として祀っているのが、火之御子社です。創建以来今日まで、舞楽・芸能の神、結縁の神、また火防の神として親しまれ、芸能、芸事を極めたい方々が参拝されています。火防の神とされるのは、岩戸の前で踊った際に火が焚かれたことが由来となっているようです。
承徳2年(1098)頃に創建された火之御子社は、神仏習合の時代から一貫して神社であり続けました。現在の戸隠神社の太々神楽は、火之御子社の神官であった栗田氏に仕えていた社人、徳武松王によって古来より伝えられてきたものです。境内には樹齢500年を超える「夫婦杉」や、僧侶であり歌人でもあった西行が戸隠を訪れた際の逸話が残る「西行桜」と呼ばれるオオヤマザクラがあります。
 また、火之御子社は古くは日之御子社であったという記録も残されています。現在も、五社のうち火之御子社だけは、主祭神である天鈿女命の他に配祀として、日の御子、つまり太陽神である天照大神の御子である天忍穂耳命、その妻である栲幡千千姫命、さらには栲幡千千姫命の父であり「造化三神」の一柱である高皇産御霊命の三神が祀られています。ここから日本の神の系譜を辿ってみるのも、面白いかもしれません。
火之御子社には
かつて立派な杉並木があった。
 江戸時代までの永きにわたって、火之御子社の神官を務めたのは栗田氏でした。その居館であった「城之内城」から、火之御子社まで北へまっすぐに延びる道を「立道」といい、この道が参道であったことがわかっています。地域では昔から「立道は特別な道だから何かを建ててはいけない」と伝えられているそうで、現在も立道の左右には畑が広がっています。
 私たちが、この立道沿いに点在していた杉の切り株に着目し、調査を始めたのは平成29(2017)年のことです。2年かけて行われた調査には、長野吉田高等学校戸隠分校の生徒さんを中心に、「戸隠奥社の杜と杉並木を守る会」や、「戸隠を知る会」の有志も参画しました。
 その結果、立道のうち熊野石塔付近から火之御子社までの道沿いに、かつて杉並木が存在していたことがわかりました。確認された杉の切り株は209本。奥社の参道沿いの杉が約220本であることから、奥社の杉並木に匹敵する規模の杉並木であったと推測されます。また、切り株の直径から、火之御子社の杉が奥社と同時期の江戸時代初期に整備されたものだということもわかりました。「戸隠村誌」(昭和37(1962)年)には、「奥院の参道や火之御子社の参道には、スギ並木を植えさせ、一山の威容を整えさせた」という一文があり、まさにその存在を証明するものでした。
 では、なぜ火之御子社の杉並木はなくなってしまったのか。地域で聞き取りを行ったところ、第二次世界大戦中に国から木材供出指示が出た際に、奥社の杉並木を残す代わりとして伐採されたということがわかりました。伐採されたのは、昭和18(1943)年の春のこと。戦争が激化し、大切な杉並木を差し出さなければならなかった当時の人の思いが胸に迫ります。今はひっそりと切り株が残る立道の歴史に心を寄せながら、火之御子社への道を歩いてみてほしいと思います。
戸隠のそば粉を活かした
たむらの代表菓子

蕎麦朧

  • 旬彩菓たむらを代表する菓子である「蕎麦朧」は、戸隠産の最上級そば粉、長野県産の上質な小麦粉、和三盆、カルピスバター等を用いた、たむらオリジナルの和菓子です。生地を仕込んで焼き上げるまで、一つひとつの工程を手作業で丁寧に仕上げるからこそ、ほろほろとした独特な食感と風味豊かな蕎麦の香りを感じていただけます。
蕎麦朧を味わう
  •  ほろほろと口どけがよく、そばの風味と和三盆のほどよい甘さが美味しいですね。戸隠産のそば粉を使っているとお聞きして、ますます好きになりました。お茶はもちろん、コーヒーと合わせても美味しいお菓子だと思います。
  • 本店
  • 住所/長野市伊勢宮1-18-14
  • TEL/026-228-9235
  • 営業時間/9:00~18:00
  • 定休日/月曜日
  • 駐車場/8台
  • ながの東急店
  • 住所/長野市南千歳1-1-1ながの東急百貨店 地下1F
  • TEL/026-226-8181(ながの東急代表)
  • 営業時間/10:00~19:00
  • 定休日/ながの東急百貨店に準ずる
  • 駐車場/ながの東急百貨店駐車場をご利用ください。
  • http://www.shunsaikatamura.com/
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(2026年6月号掲載)