• 散歩するように
    ふらりと訪れてほしい
    ふわりと風通しの良い
    あなたの美術館です。

      • 長野県立美術館
        館長

        笠原 美智子

        Michiko Kasahara

      • 長野県立美術館
      • 長野市箱清水1-4-4
      • 026-232-0052
      • https://nagano.art.museum/

導かれるように
写真の世界に足を踏み入れて。

 茅野市で薬局を営む両親のもと、3姉妹の長女として育ちました。父はどちらかといえば研究肌の人で薬局を切り盛りするのは母だったので、性別に関係なく働くことが当たり前の環境でしたし、私にとってそれは自然なことでした。
 そんな自分の感覚と当時の日本の社会に感じた違和感がより明確になったのは、アメリカ留学中に出会ったナン・ゴールディンやシンディ・シャーマンなどの70年代、80年代に台頭した多くの女性写真家の作品でした。彼女たちが写しとったものには時代の課題が反映されていて、そこから何かに背を押されるようにフェミニズム、ジェンダーという視点でアートを学ぶようになったのです。
 日本に戻り、平成元(1989)年に東京都写真美術館の学芸員として、館の立ち上げから参画。日本初の写真・映像に特化した美術館だったので、すべてが手探りでとても大変でしたが、逆に自分がやりたいと声を上げることもできて、平成3(1991)年には「わたしという未知へ向かって 現代女性セルフ・ポートレイト」展を開催することができました。この展覧会は日本の美術館としては初のジェンダー視点での展覧会と評価され、その後の展覧会の礎となりました。
 振り返れば私ほど、やりたいと思った展覧会を企画、実施できた幸運なキュレーターはいないと思います。自分でも精力的に動きましたし、また多くの人に支えていただきました。その後、アーティゾン美術館の副館長を経て、長野県立美術館の館長として長野県に戻ってくることになりました。

風が通り抜ける
美術館を楽しんでほしい。

 初めて長野県立美術館を訪れた時に感じたのは、風通しの良い美術館だなということ。建物に威圧感がなく出入口も多いので、どこからでもふらりと入ることができます。私が特に気に入っているのは屋上広場の「風テラス」です。善光寺や四季折々の移ろいが美しい山並みを一望でき、爽やかな風を感じながらのんびりとした時間を楽しむことができます。館内各所にゆったりとくつろげるソファや椅子も配置されているので、お散歩のついでにひと休みする感覚で気軽に遊びに来てほしいですね。穴場は東山魁夷館の中庭に面したラウンジ。魁夷の世界を楽しんだ後に、ゆっくりと余韻に浸れる空間になっています。ぜひ一度、訪れていただきたいと思います。
 令和6(2024)年に館長となって3年目。マネジメントに注力し、少しずつ美術館としての在り方を皆で整えてきました。特に、信濃美術館の時代から60年の歳月を掛けて収集してきたコレクションを見る人にどう届けるかは、自分たちに課せられた課題として真摯に取り組んでいます。本館では今年も4期に分けて1年間、「NAMコレクション」を展示。無料で楽しめる「アートラボ」や「アートライブラリー」もありますので、自分だけの新たな発見、新たな出会いを楽しんでいただければと思います。
 今後の予定としては、6月27日(土)から9月27日(日)まで、長野県150周年記念並びに美術館リニューアル・オープン5周年記念として「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」が開催されます。ブルックリン博物館が誇るコレクションから、棺や宝飾品をはじめ、人間やネコのミイラなど約150点の遺物を展示します。最新技術を使ったピラミッドの研究成果なども知ることができます。夏休み期間中は混雑が予想されるため、早めに足を運んでいただき、古代エジプトの世界に浸っていただきたいと思います。

(2026年7月号掲載)