
1200余年の歴史ある
戸隠の地を
これからも守り継ぐために
自分たちができることを。
2015年の国連サミットで「SDGs」が採択され、2030年までに達成すべき世界共通の目標が示されてから、今年で11年。私たちは、持続可能な社会へと舵を切れているのでしょうか。
このシリーズでは、さまざまな課題解決のために、長野の企業や団体、行政がどんな取り組みを始めているのかをご紹介します。今回は、戸隠宝光社の二番館を運営する武井智史さんにお話を伺いました。
戸隠の魅力を
もっともっと伝えたい。
戸隠、宝光社の宿坊のひとつである武井旅館で生まれ育ちました。子どもの頃の戸隠は団体で訪れる観光のお客様も多く、特に冬はスキー客で賑やかでしたね。家が繁盛するのはよいのですが、友達のように週末に遊びに連れていってもらえないことが不満で、両親を困らせたことを覚えています。
戸隠を離れ、長野市内の映像制作会社で働く中で、各地の観光地を訪れる機会があり、改めて故郷である戸隠を客観的に見るようになりました。時代の変化とともに戸隠を訪れる方は個人客が中心となり、それまでの滞在型から通過型になっています。多くは奥社や中社を参拝して戸隠そばを食べて帰るというパターンで、もっと深い歴史や面白いコンテンツがたくさんあるのに、それが伝わっていないんです。画一的な戸隠しか知られていないことにもどかしさを感じるようになり、思い切って戸隠に戻り、戸隠スキー場やキャンプ場、牧場を運営する株式会社戸隠に入社しました。
地域の皆とともに戸隠の魅力を掘り起こし、未来の戸隠がどう在るべきかを模索しながら活動する中、今年に入って宝光社区が指定管理者として運営していた「そばの里二番館」の新たな活用を検討する動きがあり、思い切ってチャレンジすることに。これまでにない切り口で、これからの戸隠に必要な場所を作りたいと、新たな「二番館」をオープンしました。
「二番館」を拠点に
新しい戸隠の在り方を考える。
この春、「二番館」はカフェ、戸隠土産のセレクトショップ、観光案内、地域文化発信など、さまざまな機能を融合した施設として生まれ変わりました。駐車場が広く、トイレも利用できる道の駅のような位置付けも兼ねています。戸隠にはこれまでこのような施設はなかったので、観光客の方はもちろん地域の方からも好評をいただいています。
古民家風の落ち着きのある店内では、宝光社の女将がブレンドした薬膳茶や薬膳ジェラート、地元のそば粉を使用したおやきやパン、お菓子などを提供しています。本格的なエスプレッソマシンで淹れる美味しい一杯を楽しみながら、ゆったりと流れる戸隠時間を感じてほしいと思います。また、スタッフとの会話を通して、戸隠の歴史や自然、美味しいそば屋など、現地ならではの情報を入手するのもおすすめです。そば店の休日情報などは、観光客の方から「ありがたい」というお声もいただいています。今後は、戸隠の伝統工芸品である「戸隠竹細工」をもっと深く知っていただけるようなワークショップも開催する予定です。さらに、戸隠地域の農家さんと連携することで、戸隠の素材を使った六次化商品の開発にも挑戦し、新規事業や地域雇用を生み出していきたいと考えています。まだ始まったばかりの「二番館」ですが、戸隠の地域活性化の一翼を担えればと思っています。
そば屋時代からの屋号である「二番館」の「二」には、受け継ぐという意味があります。これまで戸隠を支え、守り続けてきた先人に敬意を払い、二番手として歴史を受け継ぎたいと願う「想い」はそのままに、新たな「二番館」として生まれ変われたことを嬉しく思っています。戸隠は平安の頃から信仰の地として発展してきた土地であり、それは今も変わっていません。戸隠が戸隠で在り続けるために、守るべきものは守り、時代の変化に柔軟に対応できる地域を目指して、戸隠の地を次世代に引き継いでいきたいと思います。
(2026年8月号掲載)