
豊かな自然とともに
人の暮らしが息づく
木島平村の素晴らしさを
伝えていきたい。
2015年の国連サミットで「SDGs」が採択され、2030年までに達成すべき世界共通の目標が示されてから、今年で11年。私たちは、持続可能な社会へと舵を切れているのでしょうか。
このシリーズでは、さまざまな課題解決のために、長野の企業や団体、行政がどんな取り組みを始めているのかをご紹介します。今回は、木島平村観光振興局の事務局長である松森正彦さんにお話を伺いました。
木島平の魅力は
人の暮らしの中にある。
地域おこし協力隊として木島平村に移住し、観光振興局の事務局長を務めて1年になります。「外」の視点から見る木島平村は、豊かな自然と人々の暮らしが共存する素晴らしい村。西向きに開けた扇状地から眺める夕日は、感動の一言です。村の面積の約8割を森林が占め、中でもブナの原生林が広がるカヤの平高原は雄大で、天然の貯水池でもあります。恵みとなる清らかな水は大地を潤し、木島平の美味しいお米を育てています。
雪の恵みをいただき、春の芽吹きを喜び、地の利を活かした農業に汗を流し、秋の収穫を皆で喜ぶ。昔から人々が自然の恵みと四季の巡りに感謝して、大地とともに生きてきたことがわかります。ゆったりと流れる暮らしは、そこに生きる人々の心の在りようでもあり、村の人たちは皆温かく、移住してきた私にもフラットに接してくれます。
また近年では、北陸新幹線の開通により交通の便が格段によくなりました。東京から約1時間40分、飯山駅から車で約10分で、木島平村を訪れることができます。実は木島平村は、日本で新幹線の駅から2番目に近い村なんですよ。都心から約2時間で、美しい田園が広がるふるさとのような懐かしい風景と、豊かな自然を体感することができます。
この利便性を活かし、市民農園では県内外の方に田植えや稲刈りを体験してもらい、木島平ファンを増やす取り組みも行っています。
自然を守り、共存し
新たな未来へとつないで。
木島平村観光振興局では、魅力あふれる木島平村をどのように伝えていくべきか、常に模索しています。今年の6月に策定された「木島平村観光ビジョン」では、「暮らしまるごと、うまい村。木島平村」をコンセプトに、村の暮らしや営みを守りながら、木島平村の自然や暮らし、人との関わりそのものを「味わって」もらうことを目指しています。この指針のもと、単に自然を保護するのではなく、古より暮らしに根付いてきた、「自然を活かし、共存する」方法で、官・民それぞれが力を合わせ、動き始めています。
例えば、カヤの平高原には公共の育成牧場があり、今も夏の間、仔牛たちが放牧されています。ただ、頭数が減っていることで放棄地も広がっているのです。その場所を、ブナの森に戻そうと活動しているのが、株式会社モリアゲです。木島平村はモリアゲと協力し、年に数回、ブナの植樹を行っています。ブナの苗木は用意せず、原生林の中で光が当たらず大きくなれないブナの若木を探して掘り、その若木を牧草地に移植しています。その地で生まれたものに、ほんのちょっと手を貸して、森に戻る手伝いをする。これこそが、持続可能な自然との関わり方だと思います。
カヤの平高原では、登山道やトレッキングコースの整備も行っています。手を入れることで多くの方に安全に自然を楽しんでいただき、自然の大切さや共存の意識を醸成するきっかけになればと思っています。また、コースを活用したトレイルランニング大会や、高地トレーニング合宿を誘致することで、木島平村との関係人口の増加も図っていきたいと考えています。
木島平村には大きな観光スポットはありませんが、私たちが大切にしたい「暮らし」そのものが息づいています。その「暮らし」こそが、木島平村の新たな未来につながっていくと信じて、これからも様々な取り組みに挑戦していきたいと思います。
(2026年9月号掲載)