• 信州・高山村で
    玄蕎麦から挽く
    唯一無二の蕎麦を
    打ち続けていく。

      • 子安そば 文の藏 店主

        黒岩 文隆

        Fumitaka Kuroiwa

      • 子安そば 文の藏
      • 上高井郡高山村大字牧1336-2
      • 026-242-2076
      • https://nagano-soba.com/

飛び込んだ料理の道で
自分だけの技を磨いて。

 高山村で生まれ、子どもの頃から子安神社の境内で遊んで育ちました。当時は同級生も多く、学校から帰ったらすぐ外に遊びにいくようなやんちゃな子でしたね。近所の大人たちに見守られながら、みんなで育ったようなものです。
 母方の叔父に声を掛けてもらい、善光寺の仲見世通りにある「丸八たきや」で働き始めたのが、料理の道に入るきっかけでした。それまで、ほとんど料理をしたことはなかったのですが、素人の自分に「そばを打ってみるか」、「天ぷらを揚げてみてごらん」と、いろいろなことに挑戦させてくれて。見よう見まねでなんとかやってみると「初めてにしてはうまいよ」「筋がいいよ」と皆で褒めてくれるんです。それが嬉しくて、そこから本気で料理の修業を始めました。やると決めたらとことん追求する性分で、6年目には板長を任され、充実した日々を過ごしていました。けれどいつしか、自分にしか打てない蕎麦で、自分の店を持ちたいという夢を描くようになったんです。
 そんな折、玄蕎麦をそのまま粗挽きで挽いたそば粉で打つ蕎麦に出会い、食べてみたら本当に美味しくて。驚くと同時に、自分が打ちたい蕎麦はこれだと確信しました。玄蕎麦とは、殻が付いたままの蕎麦の実のことです。昔は製粉技術が発達していなかったので、石臼で挽くそば粉には殻が混ざっていたんですね。でもそれが香りの強さと旨さになっていた。そこから挑戦し続け、技を磨いて丸10年。やっと自分でも納得できる蕎麦が打てるようになりました。

故郷への感謝と
ここで生きていく覚悟を。

 生まれ育った高山村の地に店を構えたのは、地域の人たちに恩返しをしたいという気持ちがあったからです。子安神社のお膝元に店を開いたので、店名に「子安そば」を冠し、平成27(2015)年に、自宅を建て直して「子安そば 文の藏」をオープンさせました。
 要となる玄蕎麦やお米は、店から半径2㎞以内の土地で採れた、高山村産のものだけを使用しています。お米は合鴨農法による無化学肥料米のミルキークイーンです。天ぷらなどに使用する野菜も、できるだけ高山村産のものを仕入れて提供するようにしています。お客様に高山村まで来ていただくんですから、高山村の美味しいものをまるごと食べて帰っていただきたい。そんな思いで、真心を込めて毎日蕎麦を打っています。
 おかげさまで地域の皆さんにも喜んでいただき、多くのお客様に訪れていただいています。玄蕎麦で打つ蕎麦は色が黒くて荒々しい見た目ですが、香り高く、蕎麦の風味が強く感じられます。自分にしか打てない、この店でしか味わえない蕎麦だと自負しています。お客様に「美味しかったよ」と声を掛けていただくと、本当に嬉しいですね。常連さんに、「わざわざ感想を伝えてくれるということは、心から美味しいと思ったからだよ」と言われ、改めて気持ちが引き締まりました。これからも、日々、精進していきたいと思います。
 開店から今年で11年。当初は二八で打っていた蕎麦も、今は九一で打てるようになりました。ご予約をいただければ十割もできますので、ぜひ一度、味わってもらいたいですね。そしてお食事を堪能していただいた後は、高山村も楽しんでいただければと思います。自然も人も素晴らしい高山村は、知れば知るほど愛すべき村です。大好きな故郷のために、これからも楽しんでいきたいと思います。

(2026年10月号掲載)