
長野県の風土に合った
美味しいお米を
これからも
多くの方に届けるために。
2015年の国連サミットで「SDGs」が採択され、2030年までに達成すべき世界共通の目標が示されてから、今年で11年。私たちは、持続可能な社会へと舵を切れているのでしょうか。
このシリーズでは、さまざまな課題解決のために、長野の企業や団体、行政がどんな取り組みを始めているのかをご紹介します。今回は、長野県農業試験場の研究員である丸山翔太さんにお話を伺いました。
日々の研究を重ね、
長野県の米づくりを支える。
長野県は、一等米比率全国トップクラスの品質と、安定した収穫量を誇るお米の産地です。また、レタスやりんご、ぶどう、えのきたけ、カーネーションなど、質の高い多様な野菜や果物、花などを栽培する農業県でもあります。そんな長野県の農業を支え、さらに持続的に発展させるため、県内には6つの試験場が設置され、研究員たちが日々、さまざまな課題解決に取り組んでいます。
私は、お米の普及指導員として6年間、それぞれの地域に合った米の品種や栽培方法の普及に力を注ぐと同時に、多くの農家さんと直接対話を重ねる中で、今の農業が抱える課題を深く考えるようになりました。平成30(2018)年からは農業試験場の研究員として、農家さんがより美味しいお米が作れるよう、長野県に適したお米の品種やその栽培方法について研究を重ねています。
近年の温暖化による気温の上昇は、お米の栽培にも大きな影響を及ぼしています。暑さに強い品種も開発されていますが、それがすぐに導入できるわけではなく、その品種の能力を最大限に発揮する栽培方法を確立し、さらに地域ごとに最適な栽培方法を提案する必要があります。品種の導入、そこから地域別の栽培方法の提案までに最低3年はかかります。研究に終わりはありませんが、できるだけ短期で結果を出し、農家さんが少しでも安心してお米を栽培できるよう研究を続けています。
長野県の
美味しいお米を全国へ。
長野県は南北に長く、山々が連なる山岳県で標高差も大きいため、盆地だけでなく中山間地域での米栽培が昔から行われてきました。山々が豊かな水を蓄えてくれるおかげで、ミネラルを含む冷涼な水が水田を潤し、比較的深刻な水不足に悩まされることなく、安定した品質のお米を栽培しています。また、内陸性の気候のため昼夜の寒暖差が大きく、昼の光合成で得た栄養を気温が低い夜に効率よく蓄積することができるため、米の粒がしっかりとした、美味しいお米を収穫することができます。
そんな長野県の気象条件に合わせて開発したのが、長野県のオリジナルブランド米「風さやか」です。「風さやか」は、長野県農業試験場が13年の歳月をかけて開発し、平成25(2013)年3月に品種登録されました。稲の茎の部分が短いので台風などの強風でも倒れにくく、また米栽培の大敵でもある「いもち病」にも強い品種で、穂にたっぷりの米が実ります。しっかりとした旨味と甘味がありながらあっさりとした食感で、冷めても美味しいのが特徴です。「風さやか」の中でも、通常より厳しい信州独自の基準をクリアしたものは、高品質の証として統一された専用パッケージで販売されています。お弁当やおにぎりにもおすすめですので、ぜひ一度味わっていただきたいと思います。
長野県農業試験場では、これからも長野県に適した新たなお米の開発や栽培方法の確立に注力すると同時に、持続可能な農業の在り方についても検証を始めています。低コスト・省力化を目指すスマート農業もそのひとつで、経験がものをいうこれまでの農業から、経験がなくても農業に参入できる仕組みを作り、若い人が農業に参入しやすい環境を作っていきたいと思っています。永続的に長野県の美味しいお米を全国へ届けられるよう、これからも研究に邁進していきます。
(2026年10月号掲載)