旬彩菓たむら-戸隠一山
 

 長野市伊勢宮に本店を構える「旬彩菓たむら」は、季節の旬、そして人生の折々に訪れる旬を彩るお菓子を作り続けています。そんな「たむら」が、地産地消を志し、地域の素材を求める中で出会ったのが、戸隠の地。良質なそば粉を通して見えてきた戸隠の魅力を、美しい四季とともにお伝えしたいと思います。
 今回は、戸隠中社竹細工生産組合理事であり竹細工職人である、井上竹細工店の井上栄一さんに、戸隠の伝統的工芸品である竹細工についてお話を伺いました。

雪深い戸隠の地に根付く
根曲がり竹とともに。
 雪深い戸隠の山野に群生する、根曲がり竹(チシマザサ)。雪の重みに耐えられるよう根元が曲がり、しなやかに成長する根曲がり竹は、古くから戸隠の暮らしを支えてきました。
 もっとも古い記述は、江戸時代初期の慶長7(1602)年。大久保石見守長安が戸隠を訪れた際に案内役を務めた徳武利左衛門が、竹を生活資源のために伐採できるよう願い出て、高冷地で水田がない中社の現状を見た長安が、竹を年貢として納めることを条件に伐採を許可したとされています。
 当初は竹そのものを、主に建材として出荷していましたが、江戸後期になると生活用具や農業用の箕や籠などの細工ものが作られるようになりました。さらに明治時代に製糸業が国の主要産業になると、養蚕のための蚕具として軽くて丈夫な竹細工の需要が高まり、生産が追い付かないほどに。明治から大正、昭和にかけて、戸隠には150人以上もの竹細工職人がいたとされ、今の組合の前身もこの頃に立ち上げられました。
 その後、昭和39(1964)年にバードラインが開通すると、戸隠を訪れる観光客が急激に増加。戸隠そばを提供する店も増え、それとともに一人前用のそばざるが作られるようになりました。戸隠で栽培されたそばを手打ちし、戸隠の竹で作られたそばざるに盛って、戸隠で育った戸隠大根の薬味で食べる。そばも器も薬味もすべて戸隠のもので提供できることが、私たちの誇りです。
戸隠の竹細工を
日々の暮らしの中に。
 井上竹細工店は、私で5代目です。店を構えたのは3代目の祖父の代で、大正2(1913)年に創業しました。家にはさらに古い時代の「入林証」が残されており、江戸の頃から山で竹を切って生活していたことが窺えます。戸隠一山として400年以上前から受け継がれてきた竹との暮らしを次代へとつなぐため、新たな取り組みも始めています。
 竹細工の技術は、これまで「口伝」で伝えられてきました。これは技術を外に盗られないよう守るためであり、また当時の職人に読み書きができる者がいなかったという理由もあったかと思います。しかし時代の変遷とともに竹細工職人が減っている今、竹細工の技術を継承するべく、さまざまな方法で技術の伝承を行っています。一時はかなり衰退しましたが、現在は職人も30人以上になり、中には移住者もいて力強い限りです。
 戸隠の竹細工は、竹を刈るところから道具に仕上げるまで、すべて一貫して一人の職人が行います。竹割り10年と言われる竹細工は奥が深く、作る道具の形に合わせて適した竹を用意できるかで4割が決まります。竹の性質を知り尽くし、手間を掛けて丁寧に編まれた竹細工は、しなやかでとにかく丈夫。大切に扱うことで使うほどに味のある、自分だけの道具に育っていきます。ぜひ一度、戸隠の竹細工を手に取っていただければと思います。
 昭和58(1983)年に、長野県の伝統的工芸品に指定された戸隠の竹細工ですが、現在、経済産業省が主管する「国の伝統的工芸品」への指定を目指しています。戸隠の竹細工を後世に残していくためにも、日々の暮らしの中に竹細工を取り入れていただきたいと思います。
戸隠のそば粉を活かした
たむらの代表菓子

蕎麦朧

  • 旬彩菓たむらを代表する菓子である「蕎麦朧」は、戸隠産の最上級そば粉、長野県産の上質な小麦粉、和三盆、カルピスバター等を用いた、たむらオリジナルの和菓子です。生地を仕込んで焼き上げるまで、一つひとつの工程を手作業で丁寧に仕上げるからこそ、ほろほろとした独特な食感と風味豊かな蕎麦の香りを感じていただけます。
蕎麦朧を味わう
  •  この香ばしい風味とほろほろとした食感は、子どもの頃に食べた「こうせん」に似ていて懐かしいですね。今はもうないですが、隣の家がお菓子屋さんでよく遊びに行っていて。そこで食べさせてもらっていたことを思い出しました。
  • 井上竹細工店
  • 住所/長野市戸隠3416
  • TEL/026-254-2181
  • 本店
  • 住所/長野市伊勢宮1-18-14
  • TEL/026-228-9235
  • 営業時間/9:00~18:00
  • 定休日/月曜日
  • 駐車場/8台
  • ながの東急店
  • 住所/長野市南千歳1-1-1ながの東急百貨店 地下1F
  • TEL/026-226-8181(ながの東急代表)
  • 営業時間/10:00~19:00
  • 定休日/ながの東急百貨店に準ずる
  • 駐車場/ながの東急百貨店駐車場をご利用ください。
  • http://www.shunsaikatamura.com/
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(2026年10月号掲載)