• ながのという街とともに
    歴史を紡いできた映画館として
    映画がもたらす喜びを
    これからも伝え続けていきたい。

      • 長野相生座・ロキシー
        取締役支配人

        田上 真里

        Mari Tagami

      • 長野相生座・ロキシー
      • 長野市権堂町2255
      • 026-232-3016
      • http://www.naganoaioiza.com/

映画に導かれるように
縁あって今、ここに居ます。

 映画や演劇の世界に目覚めたのは大学生の時。関東の大学に進学したので、近くに映画館や芸術館、ホールなどがたくさんあってよく観に行っていました。長野と違って規模の大きいところから単館で上映する小さなシネマまで、多種多様な上に数も格段に多いので、メジャーなものからインディーズ系まで、幅広い中から好きなものを探すのが楽しみでしたね。映画もお芝居も、こんなにいろいろなものがあるんだということを実感しました。
 長野に戻ってからは、2006年に閉館となってしまった長野東映で映写技師として働き始めました。それまで観る側だったのが観せる側になったことで、改めて映画の奥深さに触れることができました。お客さまの反応がダイレクトに伝わってくるのも醍醐味でしたね。
 ただ、どうしても上映本数が限られてしまう中で、自分が心から観てほしいと思う映画を上映できないというジレンマもあって。それで仲間と一緒に自主上映を始めたんです。自分たちが観てほしいと思った映画を、たくさんの人たちが同じ空間に集まって一緒に観る。その空気感というか、共有する時間の心地よさに魅せられました。それが、今の自分が映画を選ぶときの原点かもしれません。
 その後、一度は映画の仕事から離れたのですが、10年ほど前に「長野相生座・ロキシー」を運営する長野映画興業株式会社の方と縁あって、映画の世界へと戻ってきました。

先人が繋げてきた歴史を
しっかりと受け継ぎ、次へ。

 当初は企画広報を担当していたのですが、2年後には支配人の立場に。歴史ある映画館を任されたことに自分でも驚き、また重圧も感じていますが、私だからできることを模索しながら、日々、スタッフとともに取り組んでいます。
 長野相生座・ロキシーには、大小3つのスクリーンがあります。上映する映画は、配給会社からの企画やサンプルをチェックするのはもちろん、お客さまからのリクエストなどを参考にすることもあります。自分の好きな映画ばかりを上映してもダメですし、マニアックすぎてもダメ。だからといって、売れる映画という視点ばかりで選ぶのもダメ。全体のバランスを考えながら、本当に良いと思える映画をお客さまに届けたいと思っています。
 今は、スマホで映画が観られる時代です。その中で、あえて映画館に来て映画を観るという時間の使い方を、改めて知ってほしい。映画と対峙するのは自分一人だけれど、他の人と同じ空間、同じ時間を共有する中で、その空気感や、笑い、泣くといった感情が相互に伝わり、倍になっていくような不思議な一体感の素晴らしさを、もっともっと多くの人に感じてほしいと思っています。
 最近は、映画好きの常連の方はもちろん、若い方に来館していただく機会が増えていて嬉しく思っています。ノスタルジックな雰囲気を残した映画館で映画を観ることで、日常からちょっと離れた時間を過ごす楽しみを味わっていただけているのかもしれません。
 長野相生座・ロキシーは昨年、長野映画興業株式会社創立100周年を迎えました。建物は今年で126年、活動写真の初上映からは121年の歴史を数えます。明治時代から連綿と続く映画館として権堂という町に根づき、地域の皆さまに愛されて今日まで続いてきました。
 その歴史をきちんと受け継ぎ、さらに未来へと繋げていけるよう、居心地のよい空間と、共にその映画に出会えたことを喜べるような作品を、これからも提供していきたいと思います。

(2018年10月号掲載)