• 毎日の暮らしの中で
    ちょっとだけ視点を変えてみる。
    ほんの少し動いてみる。
    それだけで、世界は動くんです。

      • 長野県立大学
        ソーシャル・イノベーション創出センター
        チーフ・キュレーター

        秋葉 芳江

        Yoshie Akiba

      • 公立大学法人 長野県立大学
        ソーシャル・イノベーション創出センター
      • 長野市南長野西後町614-1
      • 026-262-1725
      • https://www.u-nagano.ac.jp/

自分もまわりもハッピーに
その思いが自分の機動力。

 小さい頃から、新しいこと、ワクワクすることが大好き。好奇心旺盛で、もっと楽しくするには、もっとよくするには、どうしたらいいんだろうといつも考えているような子供でした。
 そんな私が自分の会社を起ち上げたのは、世紀が変わろうとしている頃のことです。きっかけとなったのは、1995年に起きた阪神・淡路大震災。当時兵庫に住んでいた私は、あの日、震度7を体験したことで、もう一度自分がやりたいこと、やるべきだと思うことは何かを、真剣に考えるようになりました。
 今、私たちの生きる社会には、さまざまな課題があります。例えば地球温暖化といった世界規模の環境問題。でもこれも、小さな課題が積み重なり絡み合って大きくなっています。だからこそ、自分の手の届く「気づき」を自分のことだけで終わらせずに、社会的な視点から見ることで共感者を増やし、新たな「しくみ」や「サービス」を考えることが大切なんです。
 縁あって参画することになった、長野県立大学の「ソーシャル・イノベーション創出センター(CSI)」では、そんな「視点」を持つ人たちを、どんどん増やしていきたいと思っています。ソーシャル・イノベーションというと、なんだか難しく感じるかもしれませんね。でも簡単に言えば、「自分もまわりも社会も地球も、みんなでハッピーになるために、できることは何かな」ということです。長野で暮らす人や企業、行政、そして学生たち。さまざまな立場の人が交わる中で生まれる新しい視点と、それを実現するための一歩をサポートしていきたいと思います。

学生たちの持つ力を
長野という地で開花させていく。

 1期生の学生たちと出会ってから、早4年目。学生たちの持つ潜在能力の高さや感性の輝きには、日々圧倒されています。学生は、大人たちが「しょうがない」と諦めてしまうことを、「どうにかできないか」と思考します。その力こそが、社会を変える「種」です。社会の仕組みを変えることで、もっと良くなることがあると気づくこと。その課題に対し、行動を起こす熱量を持つこと。それが、グローバル視点に繋がり、「ソーシャル・イノベーション」に繋がります。
 長野県立大学には、学生起業支援のための「長野県立大発ベンチャー支援制度」があります。これは起業を考える学生たちをサポートする制度で、既に起業した学生もいます。スペシャルティコーヒーの魅力を発信するコーヒーショップを開いた学生もいれば、地域の方から洋服の寄付を受けて古着屋を始めた学生もいます。彼らが一歩を踏み出せたのは、大学のバックアップはもちろんですが、地域の方たちが学生を、志を持った一人の起業人として迎え入れてくれたことが大きかったと思います。やる気のある人を応援する、懐深い優しさを持った人たちに支えられ、彼らは今、頑張っています。
 昭和、平成、令和と、私は時代の移り変わりを見てきました。だからこそ、「時代は良い方に劇的に変わろうとしている」と明言できます。未来は私たちの力で変えることができるんです。動くのは私たち一人ひとりであり、未来を生きる若者たちです。毎日の暮らしの中でちょっとだけ視点を変え、ほんの少し動いてみる。例えばフェアトレードマーク商品を買うだけでも、世界は確実に動きます。
 CSIの活動も、公開講座や起業塾、高校への講演、そして地域での産学官連携など、その活動はどんどん広がってきています。4月には新しい学生たちも入学してきました。大学生活を通して学生たちの中に生まれる「種」が、どんな花を咲かせるのか楽しみです。

(2021年6月号掲載)